秘められた世界的名医の信念写真はイメージです Photo:PIXTA

肝胆膵外科医である筆者は、内視鏡手術のパイオニア・ガイエ医師の技術に惚れ込みフランス留学を果たした。そこで驚いたのは、彼の卓越した技術もさることながら、名医としての強い信念だったという。「あなたしかできないすごいオペだ」と賞賛されたガイエが、感情をあらわにした理由とは?※本稿は、外科医の石沢武彰『変革する手術「神の手」から「無侵襲」へ』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。

内視鏡手術のパイオニアの
技術を確かめるために潜入

 2011年、内視鏡手術のパイオニアであるブリス・ガイエ先生に弟子入りした僕は、フランス大使館での大立ち回りの末、無事に研究者用ビザをゲットすることができた。

 これで正々堂々とIMM(留学先の病院)に出入りできる!僕は本来のミッションを遂行することにした。それは、「ガイエ先生は本当に幕内先生(編集部注/筆者が師事していた肝臓外科手術の権威・幕内雅敏)の『美しい肝切除』をぜんぶ、内視鏡の穴からできるのか?」という疑問を検証するスパイ活動である。

 ガイエ先生はすべての手術ビデオをSONYのMini DVというカセットに録画していた。今では、手術の映像が自動的にサーバーに保存されることも珍しくないが、当時としては最先端の取り組みだ。

 僕はその情報を聞きつけていたので、出国前にSONYのプレイヤーを購入し、パリの部屋に持ち込んでいた。

 夜な夜な、教授室から拝借したビデオカセットを再生し、肝臓のどの部分をどうやって切除しているかメモする日々が始まった。