地下にはまだ発見されていない
無数のトンネルが存在する
ひとつ目のトンネルから程近い場所に、次のトンネルがあった。そこも同じような倉庫で、国境までの距離は先ほどよりも近いように感じる。建物内部はがらんどうで、置いてあったものはすでに押収されたらしい。最奥の部屋に進むと、鉄の扉が待ち受けていた。開閉時の防音用だろうか、扉には発泡ウレタンが塗りつけられている。カルテルの周到さがうかがえる。
隊員に促されるまま、先ほどと同様に地下へと降りる。今度は土が剥き出しの通路だ。明かりもなく、頼れるのは自前のライトだけ。先ほどの私たちの行動に気づいたのか、今回は先行する隊員がいる。ゆっくりと進むのは、足元が悪いのと、その先に待ち受けているのが国境ではなく、さらに地下へ向かう穴だからだ。
目の前に現れたのは、3×5メートルほどの縦穴。隙間を板材で雑に塞いであり、建築基準法など無視したつくりだ。その頼りない床面に乗ってさらに降りるのは無理だと思ったが、一応隊員に「降りていい?」と尋ねると、「できるなら」と失笑気味に返された。
これまでに摘発されたトンネルの中には、全長1313メートルにも及ぶものがあったという。通路には換気装置、電気設備、排水システム、さらにはカート用のレールまで備えられていた。ティファナとサンディエゴを結ぶトンネルにはエレベーターまで設置されていたというのだから驚くほかない。
2つのトンネルを見て感じたのは、カルテルの資金力と技術力、そしてここを何人の運び屋がどれだけのドラッグを抱えてアメリカに渡ったのかという問いだ。ティファナに来てから目の当たりにしているのは、これまでの密輸とは次元が違う、壁を越えるための方法ばかり。人やドラッグはどうやってアメリカに入るのか。その問いに多くの人々が翻弄(ほんろう)されている。
『ナルコトラフィコ』(丸山ゴンザレス 講談社)
ティファナの地下には、まだ発見されていない無数のトンネルが存在すると言われている。
それだけではない。別の手段で別のルートからも麻薬は大量に密輸され続けているのだ。
メキシコ国内で流通するコカインの価格は1グラムあたり20~50ドル。それがトンネルを通ってアメリカに入ると、100ドル、場所によっては1000ドルに跳ね上がる。莫大な予算をかけて掘られたトンネルの経費がここに含まれているのだ。どれだけの資金が費やされているのかはわからない。だが、利益が出ていることだけは確かだ。







