工場のシャッターが音を立てて上がる。中に入るとFGRの隊員たちが無言で待機していた。簡潔にこの場所について説明してくれる。この倉庫自体は違法ではない。使われていなかった施設を、麻薬カルテルが巧妙に乗っ取った会社名義で所有していたというだけだ。
がらんどうの空間を歩き、施設の奥へ進む。配電盤がいくつも集まった壁が目に入った。
「こちらです」
隊員が促すままに歩くと、壁を掴んで力強く引っ張った。「ギギッ」という軋む音と共に、壁が動いた。その壁自体がカモフラージュされたドアだったのだ。中を覗くと地下へ続く梯子が見える。先は真っ暗で底が見えないが、地下トンネルの存在を物語っていた。
麻薬トンネルに降り立ち
感じた“底知れぬ虚無感”
「降りていいですよ」
「では早速」
好奇心を抑えられない私は勢いよく梯子に足をかけた。そんな私を見て、隊員がすかさず声をかける。
「危ないですから、十分に気をつけてください」
梯子を降りながらディレクターに視線を送る。正確に意図は伝わっていないだろうが、私が何かしら企んでいることは察したはずだ。地下までの深さは約3メートル。梯子は頼りないが、降りるだけなら問題はない。これまでの旅で痛めた膝が少し悲鳴を上げたが、それもまた長い旅の証拠だ。
地面に降り立ち、周囲を見渡す。通路のようだ。人気は一切ない。天井は低く、倉庫の基礎を流用しているのか、壁面は整然としていた。整いすぎていて、逆に不気味だった。
しばらくしてディレクターも降りてきた。
「行くよ」
「ここでの感想とかコメント欲しいんですが」
こちらの意図を察していない様子だ。
「FGRが降りてきたら、奥まで見せてもらえないかもしれない。今のうちに行けるところまで行っちゃおう」
「マジですか?」
「摘発済みのトンネルに恐ろしいものなんて、せいぜい事故くらいだ」
「事故が一番イヤなんですけど」
「いいから行くよ」
そう言って歩みを早めると、ディレクターは慌ててついてくる。禁止されているわけでもないし、これまでの坑道経験から「まあ大丈夫だろう」という感覚があった。実際、古いトンネルでのトラブルは崩落か転落くらい。それにだけ注意していれば、問題ないはずだった。







