「俺が横綱になれなかった理由がわかったよ…」横綱に上り詰める力士の決定的な特徴写真はイメージです Photo:PIXTA

「人が綱を選ぶんじゃない。綱が人を選ぶんです」。横綱・曙はそう語ったという。横綱まで上り詰める力士とはどんな人物なのか、歴代の横綱たちの逸話をたどると常識を超えた「変わり者」の姿が浮かび上がってきた。※本稿は、朝日新聞社記者の抜井規泰『白鵬はなぜ嫌われなければならなかったのか だれも知らない角界不思議話』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

朝青龍から白鵬に
受け継がれた絶対王者の座

 格闘技は、時にバケモノのような強者を生む。

 たとえば、柔道。ロサンゼルス五輪金メダリストの山下泰裕・日本オリンピック委員会前会長は、全日本選手権を9連覇して引退するまで203連勝、対外国人生涯無敗のまま現役を終えた。「霊長類最強女子」と評されたレスリングの吉田沙保里さんは、世界大会16連覇、個人戦206連勝という記録を残した。

 団体競技では、こうはいかない。

 白と黒2つの碁石を袋に入れ、1つを取り出すとする。15回連続で白の碁石を引き出す確率は、3万2768分の1。プロ野球の開幕最多連勝記録は、1954年の西鉄と99年の中日が記録した11連勝だ。ところが、大相撲では初日から15日間の全勝優勝がまま起きている。

 朝青龍の引退で、2010年から白鵬の1人横綱が始まり、白鵬が土俵に君臨し続けた。その白鵬の引退後、土俵は「次の絶対王者」を求め続け、混乱が続いてきた。22年は、年間6場所すべて異なる力士が優勝した。「連覇」をみると、21年秋場所と九州場所を制した照ノ富士から2場所連続優勝はなく、大の里がようやく25年春場所と夏場所を連覇した。

 白鵬引退後の「混乱期」から誕生した75代横綱大の里は、団体競技にはない格闘技特有の「絶対王者」として土俵に君臨する資格を得つつあるのかもしれない。