常識的な人間では
横綱になれない?
横綱の昇進条件は、横綱審議委員会の内規に定められている。ご存じ「2場所連続優勝、または、それに準じる成績」である。
江戸時代から数えて75人しかいない横綱。どんな力士が、綱に手が届くのか。
近年の幕内の土俵は、外国人と大学相撲部出身者が席巻している。42人の幕内力士のうち、日本出身力士が三十数人。その約半数が大学出だ。
ところが、横綱に限ると、日本大出身の54代輪島しかいなかった。大の里が史上2人目の大学出身横綱となったが、大学出身力士が幕内を席巻する中、「大学出は横綱になれない」が定説だった。
なぜ、大学出だと横綱になれないのか。常識が身についてしまうからだ。
「横綱は、みんな変わり者だよ。まともなのは、俺くらいだよ」
61代横綱北勝海の八角理事長が、冗談めかして語ったことがある。ただ――。
中学を出て入門した時、8歳上の兄弟子・千代の富士は、すでに三役経験もある気鋭の幕内力士だった。当時、千代の富士が飲んで部屋に帰ってくると、付け人たちはどんな夜中でも起きて、着物を畳むなど、身の回りの世話をしなければならなかった。その夜は、北勝海(当時のしこ名は本名の保志)の当番だった。
「おい。帰ってきたぞ」
布団の上から足を蹴飛ばされたのだが、北勝海はいびきを立てて寝たふりをし続けた。ぎゅっと目をつむりながら、こう念じていたという。
「冗談じゃない。俺は強くなるために、いま寝ているんだ。起きないぞ」
花瓶の水を顔にかけられたが、歯を食いしばって寝たふりを続けた。そんな裏話を、大笑いしながら披露してくれたが、「それを思うと、俺も変わっているのかなあ」と八角理事長。
変人な鶴竜も北の湖も
自分は普通だと思っていた
母国語のモンゴル語に、日本語はもちろん、英語やロシア語も操る71代横綱鶴竜(現音羽山親方)は、穏やかな性格で知られる。だが、その鶴竜も――。
鶴竜は、2014年3月の春場所後に、横綱昇進を決めた。







