なぜ、同じように学んでいるのに、成績もメンタルも差がつくのか――。その分かれ道にあるのが「アウトプット習慣」です。精神科医で『こどもアウトプット図鑑』(サンクチュアリ出版)著者の樺沢紫苑氏が、精神科医の知見から“話す・書く・行動する”ことの効果を、言語化のプロで『こども言語化大全』(ダイヤモンド社)著者の山口拓朗氏と語り合います。記憶の定着からストレス耐性までを左右する、子ども時代の決定的習慣を形づくるものとは。(構成・森本裕美)
精神科医・樺沢紫苑氏(左)と言語化のプロ・山口拓朗氏(右)
成績の悪い子は教科書を「読む」だけ
山口拓朗(以下、山口):最近「言語化」や「アウトプット」という言葉が注目されていますが、子どもの頃からそれらを練習することについてどう思われますか?
樺沢紫苑(以下、樺沢):非常に大事だと思います。脳の成長は小さい頃にガーッと成長して、20歳ぐらいから徐々に緩やかになります。その後も、脳は成長しますが、子どもの頃だと大人の10倍くらいの効果が得られるように思いますね。大人になって「コミュニケーションが苦手なので何とかしたいです」とか「どうやって勉強したらいいですか」と悩む人は多いと思うんだけど、子どもの頃に数ヵ月やっただけでも全然違います。脳が成長する真っ盛りの時期だからこそ、そういうちょっとしたアウトプットが大事です。
山口:「アウトプット」というのは、「話す・書く・行動する」のことですよね?
樺沢:はい。脳の中に情報が入ってくる「読む・聞く・見る」はインプットで、「話す・書く・行動する」のがアウトプットです。実は、インプットだけでは脳が育たないということが最近分かっているんですよ。たとえば、成績の悪いお子さんは教科書を読むだけなんですよね。教科書を読んで何か勉強した感じになっていることが多い。だけどそれだと、インプットだけだから記憶に残らないんです。
山口:なるほど。
樺沢:だから、頭に入れたものを書いたり、言葉にしたり、問題を解いたりすることが大事です。そういうことをしていかないと記憶として定着しないし、脳が育ちません。脳の神経細胞って、木のようにいっぱい枝を伸ばしているんですよ。その木っていうのは毎日毎日、情報が入れば入るほど枝を伸ばして、同じ情報が何度も通るところがどんどん太くなっていくんですね。だから勉強も何度も同じところを復習すればするほど太くなってきて、神経の伝達速度も速くなってきます。子どもの脳はものすごく活発なので、インプットしたらアウトプットするという脳に刺激を与えることを、子どもの頃からしっかりしておくといいんじゃないかなというのが私の考えです。
子どもが疲れて勉強したがらないときは、コミュニケーションを
山口:子どもの時に運動習慣がある人は、大人になってからも運動する習慣がつくと思うんですけど、言語化やアウトプットも結構似ているんじゃないかなと思っていて。子どもの時に「言葉にすることの大事さや楽しさ」をちゃんと感じることができれば、大人になってからも継続されやすいのかなと思います。
樺沢:そうですね、苦手意識を持つとよくないんですよね。苦手意識を持つと遠ざけていくけれど、面白いとか楽しいということは、子どもは勝手にやり始めるので。だから、山口さんの本(『こども言語化大全』)のように、ゲームとか、遊びっぽいことをしながら言葉にする能力を高めていくアプローチは、すごくいいことだと思います。
山口:ありがとうございます。この本は、お勉強チックなことは一切言わずに、遊びながら言語化力を伸ばしていくことにフォーカスして作りました。やっぱり自分が楽しいと思えるものじゃないと子どもは取り組まないと思うので。そして実はコミュニケーションの本でもあります。たとえば親子でやった場合も「あなた本当はそんなこと考えていたんだ」となったり。日常会話だけではなかなか出てこない、相手の好きなものとか、考えていることがゲームというアウトプットを通じて、知ることができる。それもこの本の特徴ですね。
樺沢:コミュニケーションツールってことね。それで言うと、コミュニケーションというのはいつでもできるのがいいところなんですよね。勉強は疲れている時にはなかなかできないですよね。だからそんな時こそコミュニケーションです。コミュニケーションをとると「オキシトシン」という物質が出ます。オキシトシンは癒しの物質ですから、疲れを癒してくれるんです。ですから学校から帰ってきて、なんだか疲れていて勉強もしたくないという時にやるというのはすごくいいですね。そうした交流型のゲームのようなものをすることで癒やされますし、リラックスもします。脳がリラックスして、ある意味リセットされると考えられますので、疲れている時でもできるのがいいですね。
「相談する」は、大事なアウトプット
山口:樺沢先生も子ども向けの本を出版されていますよね。『子どもアウトプット図鑑』は、子どもたちが抱きやすい悩み事が全部網羅されています。一番素晴らしいのは、「アクションプラン」が最後に付いていることだと思います。行動する習慣を子どもの時から持っていれば強いですよね。
樺沢:とにかくアウトプットが大切なんだなということが、この本を読むと分かりますし、実際にアウトプットし始めているという報告を読者の方からたくさんいただいています。
山口:アウトプットの中でも「相談する」というアウトプットって、それがちゃんとできるかできないかで人生において結構重要だなという気がしています。特に子どもの場合は、何か悩んだ時や困ったことがあっても人に話せない、友達に悩みを打ち明けられない、お母さんに打ち明けられないっていう子は相談するだけで色々と問題解決が見えてきますし、感情も少し楽になったりすると思うので。
樺沢:相談するというのはかなり重要です。日本人は相談するのは恥と捉える部分があるので、我慢するという風になってしまう。これは本当に良くないです。ストレスを溜めてメンタルをやられる原因になりますので、相談してほしいなと思います。
幼少期からのアウトプットで「自分で考え、決断し、行動できる」自立した大人に
山口:樺沢先生は以前から「思ったことをちょっと言葉にしてみましょう」と、発信されていますよね。
樺沢:はい。言語化というのは元々は心理学用語で、自分の悩みや辛さ、トラウマなどを言葉にするというのが言語化です。カウンセリングの目的は言語化にあります。言語化した瞬間に自分自身を客観視できるので、トラウマなどを言語化できた時に「あ、今まで自分が辛かったのはこういう理由だったんだ」とスッキリして良くなっていく。これが心理学の言語化です。実際に、ストレスが言語化されることによって解消されるというのは、心理学的にエビデンスがたくさん出ています。言葉にするだけでストレス値が下がります。
山口:言語化とかアウトプットっていうのは悩みを解消するんですね。
樺沢:はい。アウトプットできないと、頭の中で、堂々巡りにしかならない。アウトプットできたってことは、もう自分で取り扱うことができるものになったということ。自分が何に悩んでいるかが分かれば調べる事も出来ますし、次の行動に移れる。言語化できずにごちゃごちゃしているというのが、ほとんどの人の悩みの本質ですね。だからアウトプットする習慣を持っていると脳の中が整理されて、自分が今何をしたいのか、何をすべきなのか、どういう状態なのかってことが客観的にわかるようになる。インプット・アウトプットを繰り返すことで、その力が高まっていくんです。
山口:子どものうちから言語化力を磨いておくと、ストレスに強い大人になれるということですね。
樺沢:そうですね。つまり、自分で考えて自分で答えを出せる人間になってほしいというのが、私の想いです。自分で考えて、自分で決断して自分で行動する。この3つができるってことは、大人の条件っていうかね。自立とは何かっていった時に、自分で考えて、自分で決断して、自分で行動して……、最後に実は自分で責任を取るっていうのがついてくるんですが、ここができることが大事。
山口:意外とそれをできる人は少ないですよね。
樺沢:無責任に会社もすぐやめてしまったりね。だから、そういう人が増えているとしたら、もっと小学生ぐらいのうちから必要なトレーニングってなんだろうというと、それがアウトプットだったり、言語化だったりするわけですね。そのために書いたのが『こどもアウトプット図鑑』です。
山口:子どもを自立させるためにも、今のうちからアウトプット力や言語化力を磨いていってあげたいですね。
(次回に続く)
プロフィール
精神科医、作家
1965年札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。「情報発信によるメンタル疾患の予防」をビジョンとし、YouTube(60万人超)、メールマガジン(12万人)など累計100万人フォロワーに情報発信している。著書は累計100万部の大ベストセラー「学びを結果に変えるアウトプット大全」「学び効率が最大化するインプット大全」(サンクチュアリ出版」や「ストレスフリー超大全」(ダイヤモンド社刊)ほか、50冊超。
*本記事は、『12歳までに身につけたい「ことば」にする力 こども言語化大全』(ダイヤモンド社)の著者・山口拓朗氏と、『こどもアウトプット図鑑』(サンクチュアリ出版)の著者・樺沢紫苑氏のYouTubeで公開予定の対談をベースに重要なエッセンスを再構成したものです。





