最近、言葉が出にくい、忘れっぽい、考えが鈍い――それを年齢のせいだと思っていませんか。実はその不調、静かに進むビタミン不足のサインかもしれません。脳はなぜ栄養欠乏で「頭が悪くなる」のか。見過ごしやすい仕組みを知っておきませんか。
東京農業大学で栄養について長年研究し、医師としても活動する田中越郎氏の新刊『医者が教える 栄養学的に正しい最高の食事術』をもとに解説します。
ビタミン不足は静かに脳を鈍らせる
そもそもビタミンは体の中で何をしているのでしょうか?
ビタミンには大きく2つの働きがあります。1つは細胞の代謝を助ける働き、もう1つは細胞の若さを保つ働きです。
ビタミン不足が生じると、細胞は代謝がさまたげられ元気いっぱいに働くことができなくなり、機能が低下してきます。
ビタミン不足の症状はデリケートで重要な細胞から順に出はじめます。
つまり神経や筋肉に機能障害が出やすいのです。障害と言っても、神経や筋肉全体がいきなりシャットダウンするわけではなく、全体的に機能が1%減、2%減、3%減と次第に低下していきます。
ビタミン不足で有名な病気に脚気があります。
脚気の場合は急性のビタミンB1の不足が原因です。
細胞内でエネルギーを作れなくなり、神経や筋肉が十分に働けなくなるのです。
ヒザを叩いても、神経や筋肉がうまく反応できず、足がピンと伸びなくなります。
心臓の筋肉も機能が低下するので、走ると心臓の動きが追いつかずに胸が苦しくなります。
神経は非常にデリケートな細胞で、その機能を維持するためには、さまざまなビタミンが必要です。
脳は神経の集合体なので、どのビタミンが不足しても機能低下をおこします。
軽度のビタミン不足により脳全体の機能がごく軽度低下した場合、症状としては人間だけしか持っていない高度な機能から低下していきます。
すなわち、言語を使った思考能力の低下です。言葉を使って考えたり、判断したり、記憶したりする能力からダメになっていきます。
言い換えると「頭が悪くなる」のです。
たとえば、脳に必要なビタミンB1が慢性的に欠乏すると、非常に「頭が悪くなる」ことがあります。
自分が今いる場所や日にちがわからなかったり、最近の出来事を記憶できなくなったりします。
ビタミンB1の慢性的欠乏は、ちゃんとした食生活をしてこなかった人、たとえば長年お酒を多飲してきた人に多くみられ、高齢者だと認知症とよくまちがわれます。
そして、ここまでひどくなると、もう治りません。
症状が出てからたくさんのビタミンB1を摂取しても、もう元の脳には戻らないのです。
ビタミンB1に限らず、どのビタミンの不足でもほぼ同様なことがおこります。
脳の障害の程度がごくごく軽い場合は、病気としての症状は明確ではなく、ちょっとだけ「頭が悪く」なったかな、という場合も多々あると想像されます。
中年以降だと「歳のせい」で片付けられているかもしれません。
怖いのは「元に戻らない」可能性があることです。
とはいえ、今の日本では、普通の食生活をしていれば、ビタミン不足をおこすことはまずありません。
注意が必要なのは、アルコールばかりで食事はほとんど摂らなかったり、単一の食品ばかり食べたり、極端な偏食や極端なダイエットをしたりしている場合です。
何ごとも、極端に走りすぎるのはよくないのです。
(本記事は、書籍『医者が教える 栄養学的に正しい最高の食事術』から一部抜粋・編集した記事です。)
●東京農大名誉教授・栄養学の専門家である医者が教える「栄養学的に正しい」食事の大原則
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世間には数多くの健康法があふれています。
そして健康意識の高い人ほど、新しい情報を入手し、自分の生活に取り入れています。
しかし、その結果「本当の健康」を得られている人はどれほどいるでしょうか。
ひとつの論文やエビデンスだけを信じた食事では、栄養が偏ってしまいます。
また「健康意識」の高まりを狙った企業のマーケティングの影響で「必要のない食品」や「効果の薄いサプリ」を購入してしまう可能性もあるのです。
そんななか、食事対する必須知識として「栄養学」への関心が高まっています。
本書では、東京農業大学で栄養学と生理学の研究を続け、医師でもある著者が「栄養学的に正しい」最高の食事術を紹介します。
誤解しがちな栄養に関する知識を正し、実生活のなかですぐに取り入れることができる具体的な食べ方や食材、食品がふんだんに掲載されています。
基本となる知識と具体的な食事術を学ぶことで「健康法」迷子から抜け出し、食事によって人生が変わる1冊です。
主要目次
第1章 まず知るべき「栄養と食品」の基本
栄養バランスは毎日考えなくていい─「1週間」でつじつまが合えばOK
「完全栄養食」を信じるな─「これだけを食べれば大丈夫」などありえない
トクホと「健康食品」はまったくの別物─機能性食品の違いをおさえる
第2章 「病気と栄養」の危ない関係
ジュースが危ない本当の理由─果糖とブドウ糖はヤバすぎる
「体にいい油」も要注意─変性すれば、すべて悪玉
「コーラで歯が溶ける」は本当─リン酸の強さとその代償
第3章 栄養学的に「ヤバい」食習慣
ファストフードで地雷を踏むな─シェイクのヤバさを知る
黒烏龍茶でチャラにはならない─「焼け石に水」で食べ過ぎを招く
プロテインが逆効果になる?─肝臓・腎臓が酷使される理由
第4章 頭が悪くなる「脳をダメにする」食事
ビタミン不足は静かに脳を鈍らせる─頭が悪くなる仕組み
「カルシウム不足でイライラする」のは本当か?─科学的根拠はない
「コーヒーを飲まないと頭が回らない」は危険信号─カフェイン依存のリスク
第5章 「体によさそう」に惑わされないための知識
野菜ジュースで「野菜」は摂れない─ビタミンCも食物繊維も抜けている
「グルテンフリー神話」に惑わされるな─アレルギーがなければ無視していい
サプリメントは買わなくていい─価格も品質も信用できない
第6章 「食べないほうがいい」食品の誤解を解く
コレステロールは敵ではない─体の必須成分と動脈硬化の関係
「白米を食べると太りやすい」のはなぜか─長所と短所を理解する
「うま味調味料=危険」は思い込み─グルタミン酸ナトリウムの正体
第7章 誰でもすぐに実践できる「栄養学的な食習慣」
チェーン店で健康的に食べる方法─最強はリンガーハットの「ちゃんぽん」
パフォーマンスを上げるには「お酢」を飲む─最速でシャキッとする
「腸活」ブームが見落としているもの─腸内細菌は大腸にいる
第8章 「体調と体質を改善する」食事術
風邪をひいたらホットジュースを飲む─「ダイダイ湯」「生姜湯」がいい
食べるべき食品ベスト1は「納豆」─ビタミンKが爆増する発酵の力
「なんとなく不調」なときは食べものを疑う─5つの食事リセット術
第9章 「ストレスから体と心を守る」食事術
老化と病気は抗酸化物質で防ぐ─「ポリフェノールたっぷり」に騙されない
「おいしく・安く・栄養豊富」な旬の食材を選ぶ─無駄にお金をかけなくていい
強いストレスには「動物性たんぱく質」と「ハーブティー」─メンタルを整える食事
第10章 「やせながら元気になる」栄養学的ダイエット術
「2日で1.5kg」は誰でもやせられる─大切なのは継続できるかどうか
リバウンドを防ぐための小さな工夫─体だけではなく「心の健康」を維持する
「体脂肪率」に振り回されるな─大切なのは「経過」を追うこと
第11章 「健康なまま長生き」するための食事術
「空腹は最強のクスリ」は本当か?─実践してわかった長所と短所
40歳から筋肉は勝手に減り続ける─寝たきり回避には「たんぱく質」が必須
発がん性物質を避けるには「焼く」よりも「煮る」─肉はマリネがおすすめ