マウスでもそうだ。ハムスターで回し車を強化子とした実験はまだ報告されていないと思うが、おそらく訓練可能だろう。
強化子はかならずしも快だとは限らない。たとえば、輪くぐりをすると侵入者の姿を見られる状況におかれた闘魚は、輪くぐり行動を学習する。なわばりへの侵入者は喜ばしい存在ではないが、強化子として使えるのだ。しかし、たいていの場合、強化子(より専門的にいえば、「正の強化子」)は快をもたらす喜ばしきものだ。回し車で走るのが楽しいことを示す次のような事実もある。
回し車を動かなくされたラットは攻撃的になるというのだ。同じ飼育ケージに入れられたほかのラットにかみついたり、追いかけまわしたり、威嚇したりする。八つ当たりだ。大好きな遊びを禁じられた子どもはかんしゃくを起こして周りの人を困らせる。きっとこれと同じで、回し車で走れなくなって他者を攻撃するのは、回し車で走るのが楽しいからに違いない。
形も色も、そしてにおいも異なる2つの部屋をトンネルでつないだ装置(図2-6)を用意する。
同書より転載 拡大画像表示
その片方の部屋に回し車を設置して、その部屋にゴールデンハムスターを1匹で30分間閉じ込める。別の日は、回し車のない部屋に30分間閉じ込める。これを4回、計8日間訓練した後、回し車を取り去り、トンネルを使えるようにする。これでハムスターはどちらの部屋にも自由に行き来できる。カナダの研究者たちが8匹のハムスターを1匹ずつ実験したところ、ハムスターは回し車のあった部屋に長く滞在した。その部屋が好きになっていたわけだ。
ついでにいうと、両方の部屋に回し車を置くが、一方はブレーキをかけて動かせないようにした実験でも、動かせる回し車のあった部屋をハムスターは好んだ。こうした事実は、回し車で走ることによって生じた快感情がその場所と結びついた結果であろう。やはり回し車で走ることは楽しいのだ。
『ネズミはなぜ回し車で走るのか』(中島定彦、岩波書店)







