一見筋が通っているようですが、専門家としては首肯できません。例えば現在クロマグロ資源は増加傾向にあり、2024年には1970年代以降最高水準に達しています。漁業現場では、むしろ増えすぎなので規制を緩めるべきだとの声が聞かれるほどです。しかし、一般の人に届けられる報道やその考え方は、常に「乱獲」や「資源減少」に偏ります。

漁業資源を完璧に
管理することなど不可能

 データに基づく科学的制御で操業を効率化すべきだという工学的発想、科学的資源管理が可能だという誤解があるのです。現実に漁業者が行っている資源管理は全く未熟で、害悪でさえあると言い切る論者もいます。近代科学と原始的漁業を対立させる考え方です。

 しかし気まぐれに変化する自然が相手の資源管理は非常に難解かつ繊細なもので、データに基づく完璧な制御や合理化、最適化など不可能です。自然や資源はまだまだ不可知な存在で、だからこそ地道で真摯な努力が水産資源学者によって続けられています。

 彼らには常に謙虚で柔軟な態度が求められます。「科学的で絶対に正しい資源管理」が確実に存在する、そう信じること自体が非科学的なのです。

 国民と漁業者の対立を煽るような主張もナンセンスです。漁業者は国民共有の財産である水産資源を利用する立場ですから、基本的に国民と利害が一致します。漁業を維持していくために資源管理は必須であり、それを現場で実現する主体は漁業者なのです。行政や科学者は、彼らを介してしか、国民のための資源管理などできません。

 日本が世界に誇る「資源管理型漁業」は漁業者自らがあみだした自主的管理スキームです。対立を煽ったり、未熟な科学を振りかざすより、自然と向き合う日本古来の柔軟でおおらかな姿勢を再評価すべきです。自然の変化に合わせて漁業も変化し、国民はそれを受け入れて食生活を柔軟に変えていく。食べたいものを獲るのではなく、獲れたものを有り難くいただく謙虚さを忘れてはなりません。