北海道ウトロ漁港、秋鮭の水揚げ写真はイメージです Photo:PIXTA

スーパーに並ぶ魚の値段が上がり続ける昨今、日本の漁業者の「乱獲」を問題視する報道を耳にしたことはないだろうか。しかし専門家は、その認識は「誤っている」のだと警鐘を鳴らす。※本稿は、水産学者の佐野雅昭『日本漁業の不都合な真実』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

マスコミが問題視する
「乱獲問題」の本質

 どれだけ人間が適切に管理しても、自然の営みの中で資源の変動や増減は避けられません。野生生物である海の魚の資源量や漁獲量が自然の環境変化に左右されるのは当たり前です。欲しい魚が減り、欲しくない魚が増えるなど、資源と利用のギャップは必ず発生します。

 ところがメディアやSNSでは「乱獲」「資源減少」が常に問題視され、「魚が食べられなくなる」、「日本の海から魚がいなくなる」などと不安を煽り、耳目を集めようとします。中には「国民共有の水産資源を、漁師たちが儲けるために収奪している」と言うような論者もいます。どうすればそういう理屈になるのか、不思議です。

 こうした言説は、みんなが食べたがる経済的価値の高い特定の魚、例えばクロマグロやシラスウナギ(ウナギの稚魚)に集中します。注目度の高い魚種が一時的に減った、というミクロな現象を切り取って犯人捜しをした挙句、根拠なく漁業者に責任を負わせようとします。

 増加期にある魚種は無視し、たまたま減少期にある魚種を取り上げ、あたかもそれが資源全体の減少であるかのように論じる主張、漁業者による天然魚の漁獲を厳しく規制して養殖生産に切り替え、資源の維持を図るべきだという主張もよく見かけます。