心臓が苦しいシニアの男性写真はイメージです Photo:PIXTA

老化は「衰え」だと思われがちだが、細胞の世界では少し違う。老化した細胞は、弱るのではなく、増えるのをやめて体内にとどまり続ける。しかもこの「老化細胞」は、全身に炎症を引き起こし、動脈硬化や糖尿病、アルツハイマーの原因にもなる一方で、がんの発生を防ぐ役割も担っている。なぜ、そんな矛盾した仕組みが存在するのか。※本稿は、細胞生物学者の吉森 保『私たちは意外に近いうちに老いなくなる』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。

細胞老化の本質は
増えなくなること

 細胞老化の定義ははっきりと決められています。専門用語で「不可逆的な増殖の停止」とされています。

 不可逆的とはもとに戻らないという意味なので、細胞老化とは「細胞の増殖が一度止まったら、再び増え始めない状態」となります。老化というと、活動が鈍ったり、機能が衰えたりと考えられがちですが、そうではなく、細胞が完全に増えず、それで止まった状態のことです。

 人間の細胞の数は大人になればどんな人でも同じです。太っている人でも痩せている人でも数は変わりません。太っている人は細胞が多いと思われるかもしれませんが、細胞のひとつひとつが脂肪で大きくなっているだけです。

 細胞は、程度の差がありますが、ある年齢までは増えていきます。分裂を繰り返しながら増殖しています。だから、こどもの体と大人の体の大きさは違います。細胞が増えているから、背や内臓が大きくなります。

 ただ、一定の年齢になるとほとんどの細胞は活動を一時的に止めます。身長が40歳や50歳になっても伸び続ける人はいませんね(いたとしてもかなり稀です)。