究極的には、老化細胞にはいろいろなタイプがありますから、SASPを過剰に起こしている悪玉の老化細胞だけを除去すればいいわけです。

 ただ、現時点では悪さをする老化細胞だけを選択して除去するのは簡単ではありません。根こそぎ除去する方法にはリスクがあることは知っておきましょう。

 実際、2020年にフランスの研究者が発表した論文では、P16がたくさん働いている老化細胞を除去したマウスでは肝臓の類洞(毛細血管のようなもの)の細胞が死に、そのために線維化が起こり、健康状態が悪化したと報告されています。

細胞老化を防ぐためにできることは
結局は生活習慣に尽きる

 不要な老化細胞だけを選別して除去するのは有効な手段ですが、まだ時間がかかりそうです。そもそもメカニズムがはっきりしない時点で老化細胞を除去してしまえば有益な面も損ないかねません。

 原先生は「私たちが今すぐにできることは細胞老化をなるべく起こさない生活を送ること」と提唱します。

 細胞の老化はいつどのように起きるかはわかっていませんが、防ぐことはできます。DNAをできるだけ傷つけない生活を送ればいいんですね。

 そう聞くと難しそうですが、実は普通に健康にいいと言われている生活をすればいいのです。

「細胞老化が起こりにくい生活」は、以下のようなものです。たばこを吸わない、酒はほどほどにする、食べ過ぎない、紫外線を浴びすぎない、適度に運動する、十分に眠る。

「あたりまえのことばかりだな」と拍子抜けした人もいるかもしれません。

 細胞が老化しないからといって個体が老化しないわけではありませんが、個体によいとされていることは細胞にもいいのです。