しかし、筆者は様々な会社を見る中で、「意識変革アプローチ」は今の組織を動かすには有効ではないと考えるようになりました。
理由の1つは、そもそもの人の仕事観や属性が多様になりすぎたことです。たとえば若い世代は、売り手市場の中で会社に骨を埋めるようなキャリア観を持っていません。若者以外にも、外国人、シニア、副業やフリーランスなど、一緒に働くメンバーの生き方や考え方がバラバラな中で、組織全体の意識を同じ方向に向けようとすることのコストは、極めて高くなっています。
さらに、人の意識を他人である会社側が変えることの難しさもあります。アメリカの心理学者ジャック・ブレームが心理的リアクタンスと名づけたように、人は、自分の自由を誰かに制限されたと感じたときに、その自由を取り戻そうとして反発を強めます。
経営陣が「危機感を持って仕事しましょう」と言ったところで、「はい、変えます!」と素直に応じる人はあまりいません。むしろ「自分の責任を現場に押しつけるな」と白ける人の方が多いくらいです。そのように、「自分がどう思うか」「何を大事に思うか」という個人の価値判断を他人である会社や上司が動かすのは容易ではありませんし、これからますます難しくなります。
「どうせ訓練でしょ」
警報が鳴っても逃げない心理
一方で、コモン・センスは、人の内なる価値判断のレベルではなく、「周りがどう思っていると予期しているか」という、認識のレベルに位置します。価値や志向性といった深みから人を変えるのではなく、人が人のことをどう見ているかというレベルのことを扱っています(図表12‐1)。
同書より転載 拡大画像表示
この「周囲の行動への予期」が人の行動を変えることは、様々な角度から検証されてきました。







