起訴の背景には、実行犯の携帯の通信記録から、3人がこの「取り立て」以外にも、英国やオーストラリアで暮らす香港の民主活動家の動向を香港側に報告していた痕跡が見つかったからだ。英国検察は、表向きは債権回収を装いながら、実際には香港当局の意向を受けた「海外情報収集活動」があった可能性を指摘している。
2024年5月の住宅侵入事件で逮捕された11人は、その後1週間で全員が保釈された。しかし保釈の翌日、実行犯の一人が自宅近くの公園で遺体で発見され、警察は自殺と発表した。その突然の死は、事件をいっそうミステリアスなものにした。
捜査によって、ETOの銀行口座から関係者の会社や個人へ資金が振り込まれたことが明らかになった。さらには、この事件以前にもETOと関係者の間で送金が行われており、中には1年未満で100万香港ドル(約2000万円)もの資金が支払われていたことも、法廷で明らかになった。
さらに、英国籍の関係者が、英国入国審査局のシステムを利用して、侵入した家の住所や香港民主活動家の個人情報などを入手していた。これらの背後には、元警察官などが指揮するネットワークが存在し、2020年以降、在英香港人の監視活動が組織的に続けられていた疑いが指摘されている。
ETOとは何か――「貿易機関」の別の顔
本来、ETOは香港の貿易促進や文化交流を担う機関である。特にロンドン事務所は香港が英国植民地だった頃から存在する、歴史の長い重要機関であり、林鄭月娥・前行政長官をなど、同事務所の勤務経験者が帰任後に香港政界でエリートコースを歩む例が多いことでも知られる。
だが今回の事件で明らかになったのは、この事務所が単なる経済や貿易の窓口の枠を超え、政治的役割を果たしていた可能性である。
それでも2024年の住宅侵入事件後には、香港政府は関与を否定していた。ところが、今裁判直前の今年2月末、ETOの上部機関である香港政府商務経済発展局の局長が、「本件の弁護費用は政府予算で支出している」と議会で答弁した。さらに、袁被告は事件から約2年後の現在もETOで勤務を続けており、香港政府は事実上、袁の行為を「公務の延長」とみなしていることを印象づけた。







