ショート缶の市場はダウントレンド
それでも「缶コーヒーのCM」を作るワケ

 ここでコーヒー市場全体に目を向けてみたい。

 2000年代に入ると、缶コーヒー市場を取り巻く環境は大きく変わった。JT(日本たばこ産業)が業界に先駆けてボトル缶コーヒーを投入し、再栓可能な新容器が市場を席巻。また、コンビニのカウンターコーヒーが普及し、ペットボトルコーヒーも台頭してきた。

 缶コーヒーが「嗜好、止渇、機能の三拍子そろった飲み物」として重宝されていた時代は終わりを告げ、消費者は用途に合わせて飲み物を選び分けるようになった。小さな缶で飲み切るショート缶(SOT缶)のニーズは縮小し、ダウントレンドが続いている。

 そんな逆風の中でも、UCC BLACK無糖は約2年に一度のペースでリニューアルを重ねてきた。特に2019年と2024年のフルラインアップリニューアルでは、パッケージと味わいを同時に刷新。2019年には酒をブラックコーヒーで割る「ブラックボール」といった飲み方の提案をしたりした。

「市場がダウントレンドの中でもSOT缶にCMを打ち、原点回帰の訴求をしっかりやっています。その判断は、社内でも議論になります。ペットボトルやボトル缶に注力すべきではないかという声もある中で、それでもSOT缶の可能性を信じてリニューアルを続けてきました」と紙谷氏は力込める。その成果として、30周年では新規顧客の獲得に手応えがあったという。

UCC上島珈琲マーケティング本部飲料マーケティング部の紙谷雄志部長UCC上島珈琲マーケティング本部飲料マーケティング部の紙谷雄志部長 Photo by M.F.

機能性表示食品のブラックコーヒーも
新たな購買層の獲得に期待

 30年間、UCC BLACK無糖が守り続けてきた「変えないもの」とは何か。それは「無糖コーヒーをおいしく提供する」という信念と、「香料無添加でレギュラーコーヒー本来の味を届ける」という製品哲学だ。

 一方で「変え続けるもの」も多い。豆の選定と焙煎方法は、リニューアルのたびに見直す。農作物ゆえに原料の調達状況が変われば、豆の組み合わせを都度調整することもある。