2万人をみてきた組織開発コンサルタント・勅使川原真衣氏の著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』が刊行。坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛した同書の内容をもとに、抜粋・再構成して特別公開する。

組織の違和感Photo: Adobe Stock

「若手に任せてみよう」で空回り

 新年度を迎え、新しいプロジェクトで会社を盛り上げたい。そう考えているリーダーも多いでしょう。

 そんなとき、よく聞かれるのが「若手に任せてみよう」という声です。

 若い人に任せれば、新しい発想が生まれ、組織が活性化する。そんな期待があるのだと思います。

 もちろん、それ自体が間違いとは限りません。

 けれども、「若手だからうまくいく」と考えるのは、少し危うい見方です。

「若手」にもいろいろ

 なぜなら、人の持ち味は年齢だけではわからないからです。

 人への関心が強い人もいれば、そうでない人もいる。あけっぴろげな人もいれば、慎重でシャイな人もいる。こうした特徴は、年齢や性別にかかわらず、一人ひとり異なります。そして、持ち味に良し悪しはありません。

 しかも、その人らしさは無意識の部分に根ざしていることが多く、本人でさえ客観的につかみにくいもの。そう簡単に変わるものでもありません。

 米国の心理学者デイビッド・マクレランドは、その核となる傾向は16歳ごろまでに形づくられると述べています。

 つまり、「若手」というくくりだけで、その人の強みや役割まで判断することはできないのです。

組織は「良い組み合わせ」で動く

 プロジェクトがうまくいくかどうかは、誰か一人の優秀さよりも、メンバー同士の持ち味がどう噛み合うかで決まります。

 私なりの考え方でいくと、組織とは、それぞれの持ち味を活かし合いながら目標に向かって進む「走る車」のようなもの。

 車は、さまざまな部品がそろって初めて走ります。エンジンだけでは前に進めません。アクセルだけでもだめです。ブレーキがなければ危険ですし、ハンドルばかりいくつあっても困るでしょう。

 派手で目立つ役割ばかりが重要なのではありません。おとなしくても堅実に支える部分があるからこそ、全体が機能する。組織もそれと同じです。

 守護神もいればエースアタッカーもいる。それが組織の理想ではないでしょうか。

年齢でも性別でもなく、「持ち味」

 つまり、ただ集めればいいわけではないということです。

 たとえば、エンジンタイプの人はリーダーシップやバイタリティがあるように見えるので、「仕事ができる人」と評価されがちです。ですが、チームにそんな人ばかり集めたらどうなるでしょう。

 悲しいことに、俺が俺が、私が私がでは、まとまりません。走りながら考えるので、細かなミスや事故を防げないことも。相手の感情に寄り添う前に反応しがちで、クレーム対応のはずがお客さんとケンカになったり……。

 現実には、縁の下の力持ちとしてルーティンワークをやってくれる人、注意深く状況を分析して、いざというときにブレーキを踏んでくれる人、トラブルが起きたときに、相手に頭を下げてくれる人。さまざまな人がいるからこそ、組織は円滑に回っていくのです。

 これは、たとえば男性社員の多い会社で「女性だけのプロジェクト」なるものを立ち上げるような場面にも通じます。

 属性が同じだからといって、持ち味まで同じとは限りません。逆に言えば、属性だけを見てチームを組んでも、うまく機能するとは限らないのです。

リーダーは「観察」をさぼってはいけない

 だからこそ、リーダーに必要なのは、年齢や性別といったわかりやすい属性で人を判断することではありません。

 一人ひとりをよく観察し、その人の内面にどんな持ち味があるのかを見極めることです。

 誰が前に出ると力を発揮するのか。誰が支える役に向いているのか。誰が調整役として効くのか。

 そこを見誤れば、どれほど意欲的な人選でも空回りしてしまいます。

「若手に任せる」ことが悪いのではありません。年齢というラベルだけで人を見てしまうことが問題なのです。