急な「無感情」は脳の機能低下やうつ病の兆候の可能性があり、受診が必要です。一方、慢性的な無感動はエネルギー不足から心を守る防御システムであり、単に疲れているだけの状態と言えます。感動や充実感は心身の回復過程で「一番最後」に戻るため、焦る必要はありません。人生をつまらないと諦めず、やるべきことを減らしてぼちぼち休みながら、感情の回復を待ちましょう。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・斎藤順)

【精神科医が教える】なぜうつ病からの回復で「楽しい」感情は一番最後に戻るのか?Photo: Adobe Stock

急な「無感情」は脳の機能低下のサインかもしれません

今日は、「感情が動かされない」「すっかり無感情になってしまった」……という時のお話をしたいと思います。皆さんも、何を食べても美味しいと思わない、何をしても楽しくない、感動しないといったことはありませんか? 実は、こうした「無感情」な状態が起きている時は、要注意のタイミングでもあります。

急に無感情になった場合は、うつ病などでよく見られる症状の可能性があります。うつ病にはさまざまな見方がありますが、簡単に言うと「脳の機能が一時的に低下している状態」です。脳の機能が全般的に低下しているため、物事を決断できなくなるだけでなく、脳の機能の一つである「感情」もうまく働かなくなります。

睡眠を維持する機能、発言する力、決断力、仕事をする力、やる気を出す力など、全般的な機能が落ちてしまっている状態なのです。ですから、もし「最近、急に無感情になってしまった」と感じた場合は、まずは精神科の受診を考えてみてください。

慢性的な「つまらなさ」の正体は?

ここからは、急性の症状ではないものの、なんだか慢性的に「感動しなくなった」「何を見てもつまらない」「なんとも思わない」と苦しんでいる方へ向けたメッセージです。

急にそういった状態になった場合は受診をおすすめしますが、そうではなくても、環境の変化や年齢を重ねることによって「何をしても楽しくない」と感じることはあります。そんな時、「自分はもう感動できない人間になってしまったのか」「人生つまらないな」と思ってしまうかもしれません。しかし、それは体調と連動していることが非常に多いのです。

慢性的にそうした状態が続いているからといって、あなたが「感動しない人」や「世界がつまらない人」になってしまったわけではありません。病的な状況までいかなくても、人間は疲れていると感情が反応しなくなります。これはある種の防御システムです。感情を揺り動かされることは、実はかなりのエネルギーを使い、ストレスにもなるからです。

ですから、エネルギーがない時に無感情・無感動になるのはごく自然なことです。今はそのままで構いません。むしろ「一刻も早く休んだほうがいい」というサインだと捉え、やることを減らして、しっかり眠って休むようにしてください。いつか必ず感情は回復してきます。

意欲や感動が戻るのには時間がかかります

私も過去にうつ病を経験しています。パートナーを亡くし、その後バタバタして、仕事がようやく落ち着いた半年から1年後くらいにうつ病になりました。

かなりシビアな状態でしたが、クリニックを経営する立場でもあったので完全に仕事を休むことは難しく、最小限に回しながら、人を雇ったりしてなんとか凌いでいました。とはいえ、人を雇うのにも膨大なエネルギーを使いますから、本当はしっかり休むべきだったのですが……。

そんな状態の時は、せっかく休みを設けても動けず、ゴロゴロしているだけでした。朝起きた瞬間、晴れていても「また1日が始まるのか」としんどくなり、雨が降っていればもっとしんどくて泣きたくなるような毎日でした。

少し回復してきて、「YouTubeでも見ようかな」と思っても、1分と見ていられず、内容がまったく頭に入ってきませんでした。当時は世界がセピア色や白黒どころか、ほぼ真っ黒に見えていたように思います。