森七菜さん主演の映画『炎上』が、公開から連日満席で話題だ。歌舞伎町・トー横に集う若者を描いた本作で監督・脚本を務めるのは、サラリーマンでありながらサンダンス映画祭で日本人初のグランプリを受賞した長久允氏。その思考法を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』から、抜粋・再構成し、作品づくりの根幹に迫る。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

脚本の教室Photo: Adobe Stock

スタートには必ず「怒り」と「悲しみ」がある

 私はニコニコしているけれど、いつも怒っている。いつも悲しんでいる。

 私の映画を観てもらったらバレてるかもしれないけれど。

 いつもスタートは「怒り」と「悲しみ」です。

 10代の自殺率が高いという「怒り」と「悲しみ」。

 性教育に対して男性が無知すぎるし、社会構造が女性に不利すぎるという「怒り」と「悲しみ」。

 政治や事件、もっと細かな日常の「怒り」と「悲しみ」。たとえば、

 どうして夫婦ってこんなことで喧嘩してしまうの? とか、
 どうして受験ってこうなっているの? とか、
 どうして食品流通ってこんなにブラックボックスなの? とか、
 どうしてあの友人は陰謀論にハマってしまったの? とか。

 そういう「怒り」と「悲しみ」で私の人生は溢れています。(本当は穏やかに過ごしたいのに!)

自分にしかできない仕事の生み出し方

 その「怒り」と「悲しみ」に対して、私ができることは何だろうか。

 政治家ではないのでルールを変えて解決させることはできません。

 しかし自分が持つスキルとして「脚本を書く/映画を作る」というものがあるので、それを使ってできることをしたいという使命感が常にあります。

 たとえば、前述した「10代の自殺率が高い」というニュースを目にして、私は過去の自殺を考えた自分を思い出し、また現在、同じように悩む彼ら彼女たちが絶望を感じないで済むような映画を作るべきだと思いました。

 それが『WE ARE LITTLE ZOMBIES(ウィーアーリトルゾンビーズ)』という映画の始まりです。

 もうひとつ例を挙げるなら、「性教育に対して男性が無知すぎるし、社会構造が女性に不利すぎる」点について描くべきだと感じ、私は『FM999』というドラマを制作しました。

「女って何?」という16歳の女性の疑問に対して、30人の女性たちが現れ、それぞれに違う経験と所感を歌で伝えていく、というミュージカルです。

 このように、いつだって、より個人的な怒りと悲しみから端を発して、「私はこれを作るべきである」と思い込み、行動を起こしています。

たった一人の感情が、最も世界に届く

 そしてそれが、結果的には人種も国も超えて、最も多くの人に伝わるのです。

 逆に言うと、「ちょっとおもしろい話になりそ~だな~」というアイデアを思いついたとしても、それだけで脚本を書くことはほとんどありません。

 単純に「おもしろい物語」に価値があるとは別段思っていないからです。

「おもしろい企画」よりも「それをやるべき理由」が私にとって大事なのです。