元気なお年寄りが多い日本では
暦年齢で治療方針を決められない

 図表1-1には、2024年の日本人の平均余命の概要を示している。男性の平均寿命は81.09歳、女性は87.13歳だが、これは70歳の男性が平均してあと11年しか生きられないということを示しているのではない。2024年に70歳である男性は平均して85歳を超えて、女性は90歳近くまで生きる。

 80歳ならば、男性は平均して89歳近くまで、女性は92歳近くまで生きるというデータとなっている。

図表1-1 日本人の平均余命(単位:年)同書より転載 拡大画像表示

 なお、世界の最高齢者の年齢がおおむね120歳以下であることから、すべての人間の命は120歳までには尽きてしまうことも事実である。たとえ、医学、科学が大きく進歩してもこれ以上の長寿は期待できないだろう。

 医療の現場では高齢者を定義することは意外に難しい。日本では社会制度上は、65歳以上を高齢者とし、65~74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と区分している。

 これに対して、医療現場では、患者が、診断や治療における様々な負担に耐えられるかどうかを判断せねばならない。がんの場合、治療の負担も重く、患者が治療に耐え、健康を取り戻せるかを、一人ひとりについて見極めねばならない。

 そこで、医療スタッフは、暦年齢とともに、患者一人ひとりの老化の程度、持病、精神状態、社会的状況などを加味して対応する。日本人は総じて老化の進みが遅く、重い病気に罹る年齢が比較的高く、元気なお年寄りが活動する場面が多いので、この見極めは重要である。

健康と要介護のわかれ道
「フレイル」状態でどう手を打つか

 近年、高齢者の健康管理や疾病対策では「フレイル」という概念が注目されている。

「フレイル」とは、欧米で高齢者の老化レベルを示す言葉として用いられている「Frailty(虚弱、脆弱)」を意識して提唱された日本独自の概念で、おおむね健康な高齢者(健常)と持病の悪化や老化現象のため介護が必要となった高齢者(要介護)の中間に位置するグループとして提唱されている。