しかし、この「お祝い購入」が止まらなくなってしまったのです。

 翌月も、その翌月も、「せっかくだから」「これも欲しかったんだ」と買い物は続きました。残念ながら、その方は3年後には資産のほとんどを失っていました。

なぜ、「突然の富の罠」に
ハマってしまうのか?

 この現象は、2つの理論で説明できます。

 1つ目は、心理学で「サデン・ウェルス・シンドローム(Sudden Wealth Syndrome:突然の富症候群)」として研究されています。心理学者スティーブン・ゴールドバートが提唱したこの概念は、突然、富を得た人が陥りやすい心理的混乱状態を指します。

 高揚感と罪悪感が入り交じった不安定な感情、孤独感、そして「この富がいつかなくなってしまうのでは」という強迫的な恐れから、かえって散財に走ってしまう――これが没落する人の典型的なパターンなのです。

 また、コツコツ働いて貯めたお金は慎重に使うのに、ギャンブルや臨時収入で入ったお金はあっさり使ってしまう。これは「苦労して稼いだお金ではない」という心理が、無意識にブレーキを外してしまうからです。

 この現象は、二つ目の心理学理論で説明できます。2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラーは「メンタル・アカウンティング(心理的会計)」と名付けました。人は同じお金でも、その「出どころ」によってまったく異なる扱いをしてしまうのです。

1000万円を手にした人の
「金銭感覚の麻痺」

 さらに深刻なケースもあります。多額の資産を手にするほど、その感覚が麻痺してしまうのです。

 不動産投資で1000万円の利益を上げた方。その方が次にとった行動はその10倍、「1億円の勝負」でした。

「1000万円なんて、1億円から比べたら誤差の範囲だろう」

 その感覚で、リスクの高い投資に次々と手を出していったのです。1000万円なら慎重に検討していた投資案件も、利益が出たことで金銭感覚が狂い、「次は1億円だ」と軽い気持ちで決断してしまいました。結果として、利益の大半を失うことになりました。