最先端AIが世界の経済に与える
プラスとマイナスのインパクト

 高性能なAIの登場は、世界経済にプラスとマイナス、両方の影響を与える。まずプラス影響の一つは、事業運営や研究開発の効率性向上だ。AIがデータ分析することで、バイオ医薬品の開発コストが低減したり、先端半導体の開発が加速したりするだろう。それは省人化にも寄与する。

 一方、マイナス影響も大きい。一般公開できないほどミトスの脅威は甚大であり、もし悪用されれば、電力や水道、医療など生命に関わるインフラ攻撃のリスクが高まる。そうしたリスクの抑制・排除に、今まで以上にサイバー・セキュリティー体制の頑健さが求められる。

 対応策にコストや手間暇がかかり、さらに強力なセキュリティー・ソフト開発の必要性に迫られる……。人間がサーバーを管理し、緊急時にネットから遮断して業務の継続性を担保するのも急務である。

 AIの安全安心な利用には、従来の兵器の輸出管理のような、多国間のルール形成も欠かせない。ところが現状、欧米諸国、新興・途上国などとのルール形成が難しくなっている。むしろ、他国に介入したり、国民を監視したりするために、AIを利用するリスクすらある。

 世界の投資家が、AIのリスクを冷静に評価しているか否かも不安材料だ。4月は世界的にAI関連銘柄が反発している。先行きを楽観する投資家は多い傾向で、ミトスの危険性やAIの脅威を冷静に評価する見方はむしろ少数派といえそうだ。

 仮にAIを使ったサーバー攻撃が起きると、世界的な混乱は必至。アンソロピックが一般公開を見送ったのは、その対応策の整備ができていないからであろう。

 規制のリスクもある。欧州委員会が規制強化を打ち出し、即座に応じないAI企業には制裁を科す展開も予想される。それも、金融市場の不安定感を高めるだろう。最先端のミトスの出現で、AI利用のリスクやコストがこれまで以上に高まった点を冷静に考えたい。

真壁昭夫さんのプロフィール