「天の使い降臨!」
こうして7人はその朝、松井に、全員の見解として、看護婦とは何かを発表する。
東雲(中井友望)「看護婦にとって、最も基本となるのは、病人がいちいち言葉にせずとも、その顔つきや、ちょっとした態度の変化から、気分や体調を察する力を持つことです」
直美「これこそが、オブザーブ、『観察する』です」
すばらしい回答を導きだすことができた7人は満足。教室の外で校長(伊勢志摩)がのぞいている。
こうして「看護とは何か」という日本語訳ができあがった。1冊訳したのか?最後の章だけまとめたのか?
その晩、残ったりんごでアップルパイを焼こうと盛り上がる。そうすると少しでもみんなで分けられると直美が提案したのだ。
ここでまた、料理がヘタな直美にはパイを焼くのは任せられないという話になったりして。食事のときは言い出せなかったが、率直に言い合える関係になったということだ。
女子同士のマウント合戦が長引かなくてホッとした。
だがここで注目したいのは、残り少なくなったりんごをみんなで分ける工夫を直美が提案することだ。アップルパイが7人が協力体制を結んだ象徴だ。でも結局作らなかったのだが。
看護学校の食前の祈りがキリスト教式であることから考えると、「アップル」はキリスト教において禁断の果実ではある。7人がある種の禁断の道に踏み出したという暗喩だと考えるのは穿(うが)ちすぎか。
女子同士のマウント合戦がドラマの骨子になる作品もあるが、『風、薫る』はそうではなく、7人があっという間にそれなりに仲良くなった。脚本家の語る女性同士の会話のリアリティはわかる。女性同士が連帯していくようになる過程のリアリティもこんな感じと考えていいだろうか。
どんどんいろんなエピソードを見せないと飽きっぽいのが令和の視聴者とばかりに、話は進んでいく。玉田(生田絵梨花)は手紙を読んで眉間に皺(しわ)を寄せ、手紙をくしゃくしゃにする。何かがありそうだ。
そしてやって来た待望の看護の先生もみんなが想像するすてきな雰囲気ではなかった。
「遠い日本まで、看護を教えに来てくださるぐらいだからきっと優しいお方なんでしょうね」「アップルパイ作ってくださるかもしれませんね」なんて話をしていたら、「しゃんとしなさい!」とものすごく低い声が寮に響く。
「天の使い降臨!」とナレーション(研ナオコ)。
第6週を前に、またシューッと不穏な風の音がした。









