「待っていれば勝てる」というアメリカの戦略

 トランプ大統領は「石油がない国の友人になれ、と言ってはいない。自分たちで取りに行け(go get your own oil)」とSNSに投稿した。この発言はNATO同盟国が協力を渋る中で、「孤立したことに対する嘆き」と受け取られたことが多かったようだが、もちろん実際はそうではない。

 アメリカ本土は今やシェール革命でエネルギー自給を実現している。ホルムズ海峡封鎖が長引いて原油価格が高騰しても、アメリカ国内のエネルギー産業は潤う。それに対して、イランは、石油収入がなければ軍事費も支払えず、革命防衛隊の士気維持も困難になる。そうなれば、ヒズボラもハマスもフーシ派も干上がるのである。

 逆封鎖が長期化するほどイランへのダメージは蓄積し、アメリカは文字どおり「待つ」だけで相手の国力を削ることができる。IMF(国際通貨基金)の試算では、原油・ガス価格が高止まりすれば2026年の世界GDP成長率は0.3ポイント下押しされ、エネルギー輸入依存度の高い欧州への影響は1ポイント以上に及ぶ可能性があるという。

トランプ大統領に「全賭け」した高市首相の一人勝ちに

 こうした情勢の中で、高市首相の外交的立ち位置が際立っている。欧州各国が高市首相との会談を求めているのはなぜか。答えは単純だ。欧州各国がトランプ大統領との関係を悪化させる中、「トランプ大統領と唯一話ができる指導者」が高市首相だからだ。

 高市首相は、かつて日本を外交の国際的ハブにまで押し上げた安倍晋三元首相の事実上の後継者であり、安倍元首相の築いた外交財産をフル活用できる立場にあることも大きい。また、高市首相の先を読んで能動的に仕掛ける安倍元首相譲りの外交スタイルは、プロセスを重んじて何事にも慎重な石破前首相とは対極的だが、刻々と変わる国際情勢においては高市首相の外交スタイルが適切だろう。

 高市首相はトランプ大統領が大統領に返り咲く前から関係を構築し、トランプ大統領も選挙期間中に高市首相への支持を表明した。

 就任後の日米首脳会談では空母ジョージ・ワシントンも共に訪問し、関係の深さを世界に示した。「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ」という高市首相の発言は、外交辞令を超えた「全賭け」の宣言だった。

 欧州が「国際法」「多国間主義」という看板の下でトランプ大統領と距離を置く一方、高市首相は「現実の同盟管理」を優先した。その結果として、欧州各国が高市首相を国際的なハブとして必要とするという逆説的な構図が生まれた。

「トランプ大統領に全賭け」した高市首相の判断は、今のところ正しかったといえる。もちろん、これはトランプ政権の強さが続く限りの話であり、冷徹な判断が必要な外交においては、「次の手」を打たなければならない時がすぐにやってくるはずだ。

(評論家、翻訳家、千代田区議会議員 白川 司)