高市政権「需要に応じた生産」食糧法改正案で進むコメ統制、米価維持政策に欠ける食料安全保障の視点Photo:PIXTA

政府は4月3日、コメの「需要に応じた生産」を明記した食糧法改正案を閣決定した。表向きは安定供給のための制度見直しだが、実際には米価を高めに維持するための生産抑制に逆戻りする懸念も消えない。まだ、コメ政策には食料安全保障の視点も欠かせない。コメ不足と価格高騰を招いた政策の何が問題だったのか。あるべきコメ政策を改めて問う。(昭和女子大学特命教授 八代尚宏)

食糧法改正案ににじむ
“減反回帰”の発想

 高市早苗内閣は、4月3日の閣議で、コメの「需要に応じた生産」を盛り込んだ食糧法改正案を閣議決定した。

 2026年通常国会で成立を見込んでいるが、そもそも毎年のコメ需要を正確に見積もり、それに応じて生産量をあらかじめ定めることは実現可能なのか。また、そうした計画経済体制は誰のために必要なのか。

 農水省は18年産米から、農家に生産数量目標を配分する減反政策を廃止したという。しかし、現実には生産目標自体は維持した上で、コメ農家の増産で米価が下落しないよう代替生産の飼料米に大幅な補助金を出すことで、事実上の減反政策を持続してきた。

 しかし、コメの需要や生産量を、事前に予測することは困難であり、24年にはコメ不足が生じて価格が高騰した。このため、石破前政権はこれまでの生産調整政策を見直して増産へと転換するとしたが、具体的なプロセスを示さなかったため、結果的に農水省に無視されてしまった。

 市場経済の日本で、こうした「需要に応じた生産」を定める商品やサービスはタクシーなどを除けばほとんどなく、農産物のうちでもコメだけである。今回の鈴木憲和農水相のプランは、この高止まりしているコメの価格水準を維持するために、低めに見積もったコメの需要に見合った生産制限を行うためと考えれば分かりやすい。

 次ページでは、こうした生産制限の狙いを解説するとともに、あるべきコメ政策について検証する。