ホルムズ封鎖を逆手にとる「逆封鎖」

 4月12日のイスラマバード協議決裂を受け、トランプ大統領は米中央軍に命じて「逆封鎖(Counter-blockade)」を宣言した。4月13日発効のこの措置は、イランの港湾に出入りする全船舶と、イランへの通行料を支払った船舶を対象とするものだ。

 これは、イラン革命防衛隊による各国船の通行管理でホルムズ海峡を人質にとったのに対して、トランプ大統領がイラン船の通行を人質にとったわけである。そこには、原油輸出を断てば、イランはいずれ折れるという読みがあった。

 この2つの「封鎖」対決で、より深刻な打撃を受けたのは実はイランだ。イランが被る打撃は、原油輸出ができなくなって重要な収入源を喪失したことだけではなかったのである。

 原油生産は一度止めると再起動が難しい。

 常に圧力管理が必須である油田は、長期停止すると坑井内で地下水の浸入や圧力損失が起こる。自噴する場合は問題ないが、ガスや水を注入して原油を押し出す「二次回収」の場合、注入を止めると回収率が永続的に低下し、パイプラインや分離設備の腐食や閉塞も進行する。

 イランのアフワーズやアガジャリなどの主力油田は1950~60年代に開発されており、すでに単純な注入だけでは取り切れない「三次回収」に移行している。長年の制裁で技術・部品調達が制限されており、修復能力も著しく限定されているのが実情だ。

 数カ月~1年程度の停止なら回復可能なケースが多いようだが、これらの油田は注入に海水を使っているため、放置されれば配管の塩害や地層内でのバクテリア繁殖など、致命的な損傷を招く恐れがある。長期封鎖が続き、修復資金の不足が続けば、油田自体がダメになる可能性が高い。

 これは、経済制裁と経営崩壊で油田をダメにして、「南米で最も豊かな国」から一気に凋落したベネズエラの事例を見れば明らかだろう。

 トランプ大統領の戦略は、イランに「早く降参しなければ、産油国としての能力を奪う」という、エネルギー輸出に依存するイラン経済にとって体制存続を脅かすほど本質的な「恫喝」だったのである。