日立家電の買収で
ノジマが背負ったリスク
他の家電メーカーが中国系の資本傘下に入ったのはコストが圧倒的に低いことと、14億人の巨大市場が背後に存在するという事情からです。これに対して、HITACHIはこれまで通り日本企業のコスト構造であるうえに、中国市場へのアクセスは中国系資本の競合に劣ります。さらに業界3位とはいえ、ノジマは日本市場で10%程度のシェアしか持っていません。
販売数量が減少するリスクとして一番大きいのが、買収後、残り90%の国内販売チャネルで「静かな排除」が起きることです。
ノジマのVAIO買収後もビックカメラやヨドバシカメラの旗艦店ではVAIOの展示販売が続いています。理由はVAIOというブランドの指名買い客を逃したくないからです。
しかし販売現場では当たり前のジレンマが起きます。VAIOを積極的に売れば競合販売店のノジマに利益が流れてしまいます。ですから競合する家電量販店大手では「売らない」わけではないのですが、「積極的には売らない」「売れ筋商品しか展示しない」といった静かな排除が一部の売り場で起きます。
VAIOの場合は法人シフトでブランド再生した経緯から、大手量販店はチャネルとしては主力というわけではありません。しかしHITACHIは違います。大手小売りでの扱いがどうなるかが重要です。
今、家電量販店の売り場で圧倒的な競争力があるHITACHIブランドの家電商品といえば、ドラム型洗濯機のビッグドラムでしょう。パナソニック以外の競合が実質的に海外勢になっている中で、壊れては困る機械製品の筆頭でもある洗濯機では日立の品質を求める消費者がかなりの数、いらっしゃいます。
ジャパン品質が重要視されるという点では大型冷蔵庫も同じで、国内には日立の冷蔵庫を長年愛用してきた人が一定数います。そういった売れ筋商品は大手小売店の店頭からなくなることはないでしょう。
今回の買収では、空調事業は日立側がそのまま行うためエアコンは買収対象から外れています。白物家電市場でエアコンを除くと、洗濯機と冷蔵庫は売り上げの3分の2を占めます。その市場ではハイエンドのHITACHI商品は、ノジマ買収後も他の家電量販店の売り場に並ぶでしょう。
問題はそれ以外の家電です。電子レンジや炊飯器、トースターといった必ずしもHITACHIが圧倒的に存在感があるわけではない分野では、競合小売りの販売現場で長い時間をかけて静かな排除が起きていきます。競合店にとっては「品揃えのために置いてあるだけ」の位置づけとなり、日立の家電事業にとっても利益率の低いコモディティ商品の位置づけになってしまうでしょう。
実はノジマが成功したパソコンのVAIOと、今回取り組む白物家電の事業特性としての一番大きな違いは、白物家電事業の固定費が大きいことです。この固定費の重さがあるがゆえに、メーカーは数量を追わないわけにはいかず、数量が維持できないと赤字が経営を苦しめるようになります。
このように買収のメリットとデメリットを総合すると、ノジマが勝利するためには日立ブランドを進化させる以外にないことがわかります。
この勝負、ノジマに勝ち目はあるのでしょうか?







