衰退事業にみえても、ノジマが得意とする高齢者の顧客中心にまだまだ一定の需要が存在します。このような買収戦略によってノジマの売上高は過去5年間で1.6倍に成長し、来月発表される2026年3月期決算も増収が見込まれています。

 ノジマの日立家電買収が合理的な理由は3つあります。

 ひとつは残存者利益です。先述したように、ノジマは家電小売業界の中では比較的高齢者層に強い小売りチェーンです。若者中心に家電離れが起きていて、テレビや炊飯器やトースターは場所をとるからと買わないZ世代が増加しています。一方で高齢者層は生活に必要な白物家電を当然のように買う顧客層です。

 白物業界全体に淘汰がおきて事業がスリム化した後の日立の家電事業を、株式の約80%を1100億円という比較的安い価格で買収でき、かつ引き続きHITACHIブランドを使うことができるというのは、残存者同士の戦いでは有利な条件です。

 ふたつめにノジマの独特の販売手法があります。競合するヤマダ電機やビックカメラと違い、ノジマはメーカーからの販売員を受け入れず、自社の従業員が売り場で販売する形態をとっています。つまり、売り場で無理な売り込みをしないスタイルをとっています。

 このやり方のメリットは、価格以外の顧客が求めているニーズを現場で集めやすいことです。消費者ニーズを一番よく知っているノジマのような会社が、製品開発に手を出すというのは一定の合理性があるということです。

 3つめにここが新しい点ですが、ユニクロが成功した製造販売一貫のビジネスモデルが白物家電でも成立する可能性があるということです。

 今回の買収の重要な点は、国内外に7000人といわれる日立の家電事業で働く従業員と開発製造拠点をそのままノジマが引き継ぐことです。開発、製造、サービスを国内企業として、そして小売り企業として一貫して行うという考えです。

 ここがドン・キホーテやヤマダ電機のPB家電との大きな違いです。ノジマの場合、HITACHI品質の白物家電を製造直販できるようになるのです。

 製造直販のいい点はサプライチェーンが開発製造の川上からサービス修理の川下までつながることで、サプライチェーンのどこで利益を出すのかをコントロールできるようになることです。他の家電小売店のように販売現場で価格競争が起き、安く仕入れた商品を安く売るしか利益の方程式が成り立たないようなビジネスモデルから脱却できるのです。

 このように戦略の可能性としては合理性のあるノジマの買収戦略ですが、実は今回はリスクも大きいことを忘れてはいけません。