これまでの時代であれば正直、デメリットの方が大きい勝負だったように思いますが、ノジマにとって追い風なのは、時代が家電事業にとっての転換点だということです。

 それは、ここ数年に家電に標準搭載されるAIエージェントの出現です。

 日立のドラム型洗濯機に絞って説明します。実は私の自宅と、高齢の母の自宅はどちらも日立の一番ハイエンドのドラム型洗濯機を使っています。

 私はその性能に満足していますが、母は実はそうでもない。理由はボタンが多すぎることと、メッセージが出すぎることです。正確にはボタンではなくタッチパネルなのですが、洗濯なのか洗濯乾燥なのか乾燥なのかを選ばせて、それぞれのコースでもいろいろと選択肢がたくさん表示されるのが母には使いづらい様子です。

 1カ月の間に何回かは「洗濯槽を洗浄してください」といった親切なメッセージが出るのですが、どのボタンを押せば洗濯槽が洗浄できるのか母にはわからないのです。

 結局、私か家内が様子を見にいった際に、洗濯槽を掃除したり、排水口のネットにたまった繊維くずを歯ブラシで取り除いたりして、ようやく洗濯機は通常の性能に戻ります。

 おそらくノジマはHITACHIを買収することで、こういったニーズを細かく把握できるようになります。同時に、時代はAIエージェントの時代になります。そうすると「洗濯槽を洗浄してください」などと渇いたメッセージを表示するまえに、エージェントが勝手に洗濯槽洗浄を済ませてくれるでしょう。

 母が「こないだの洗濯ものはちゃんと洗えていなかった」と不満を口にすると、洗濯機は勝手に洗濯コースを標準から頑固に変えてくれるでしょう。ないしは「こないだは時間がかかりすぎ」と不平を言うと、逆に時短コースに変更してくれるようになります。利用者が家電に不満をいえば、できることは解決してくれる時代がすぐやってきます。今はちょうどその転換点なのです。

 もちろん繊維くずがフィルターにたまったときだけはさすがにAIもお手上げで、洗濯機のほうから「おばあちゃん、もうしわけないけど僕がいうようにしてくれないかな?僕のおなかにたまってるゴミをとってほしいんだ」とため口でお願いしてくるようになります。

「そうそうそこそこ。そこをぐるぐる回すとフィルターがとれるから」みたいにAIエージェントなので高齢者でもできるようなわかりやすい指示をしてくれるので、利用者からみれば従来よりもずっと便利な家電になるでしょう。

 こういった変化の波にうまく乗ることができれば、HITACHIの白物家電はハイエンド分野で進化を遂げることができるかもしれません。そしてもしそうなれば、当然ですが商品力とブランド力で、14億人の中国市場でも拡大する未来は描けるかもしれません。

 今週の記者会見は、そのような可能性を感じさせる、ちょっと興味深いものだったのでした。

【著者の人気記事を読む】こりゃ三井住友の独り勝ちだわ…「PayPay連携」で三菱UFJとみずほを周回遅れにしたオリーブが日本人の財布を支配する未来