その転機が訪れたのは2019年の春。アンナプルナ1峰(8091m)とカンチェンジュンガ(8586m)どちらも難しい山を連続で登頂した直後でした。

 まわりから「日本人女性で7座も登っている人って、他にいないんじゃない?」と言われたのです。

「そうなの?」と調べてみたら、最高記録は5座。そこで初めて、自分が日本人女性最多だと知り、「私にも14座登頂のチャンスがあるのかな」と思うようになりました。

 ちょうどその頃、登山界では“14座ブーム”が到来していました。お金持ちや大企業をスポンサーにつけた10代や20代前半の登山家たちが、1年で何座も登頂するようになってきました。彼らの中には、登山経験がまだ浅い人もいました。

 自分との環境の違いを痛感しながらも、私は自分で働いてお金を貯め、1座ずつ登るしかなかった。だからこそ、「負けたくない」という気持ちに火がついたのです。

不器用ながらも
看護師として成長していく

 そんな私が14座を意識し始めるまでには、看護師としての下積み時代がありました。

 看護大学を卒業してから、手術室、病棟、高齢者施設と、大きく3つの現場で働きました。

 大学病院で手術室と病棟での経験を積み、その後、高齢者施設の非常勤となり夜勤専従をしながら、単発で派遣業務もするという働き方に変え、現在は単発派遣だけの仕事をしています。

 手術室業務は特殊な仕事なので、不器用な私はなかなか仕事を覚えられず、毎日が緊張の連続でした。1つのことを身につけるまで時間がかかるタイプのため、器用にこなす人と比べて評価を得にくいことにコンプレックスを感じていました。それでも、スキルを自分のものにして認められたときは、大きな自信につながりました。

 毎日、その日の手術の復習と次の日の予習で、受験勉強をずっとしている感覚でしたが、優秀な同期の仲間に支えられ、少しずつ業務を覚えていきました。尊敬できる先輩にもたくさん出会えました。よく怒られ、落ち込み、泣きましたが、最初は揉まれないと一人前の看護師になれないと思っていたので、とても貴重な経験をさせてもらったと感謝しています。