机に向かいスマートフォンを操作する子ども写真はイメージです Photo:PIXTA

「この子は勉強が苦手だから」……子どもの成績を前に、そう考えてしまう親や教師は少なくない。しかし、心理学者アルフレッド・アドラーは、子どもの可能性は生まれ持った能力だけで決まるものではないと考えた。子ども自身が「できない」という思い込みから抜け出すために大人がすべきこととは。※本稿は、心理学者の岸見一郎『アドラーの教育論 対等と自立』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。

勉強をしない子どもは
その能力がないのか?

 アドラーは、勉強しない子どもは能力がないからではなく、課題に取り組まないでおこうという決心をしていることを指摘したかったのです。最初から勉強ができないと思う子どもはいないでしょう。成績の振るわない子どもは、親や教師から無能という烙印を押されると、そのことを勉強しないことの理由にするのです。

 アドラーは遺伝的な素質に違いがあることを否定しているのではなく、それをどう使うかが重要であると考えています。素質や能力で学力が決まるのではないからこそ、教育が重要なのです。アドラーは次のようにいっています。

「もしも『君は数学の才能を持っていない』ということができれば教師の人生はもっと楽なものになるかもしれない。しかし、そうすることは子どもの勇気をくじくだけである」(『人生の意味の心理学』)

 勇気をくじかれ、自分の能力には限界があると信じてしまっている子どもがいます。そのような子どもの実際にはない「限界」を取り除くことは、容易なことではありませんが、子どもの力を伸ばすためには、まず教師が能力には限界があるという考えを放棄しなければなりません。