もちろん、電車やバスが激しく揺れてたまたま近くに居合わせた人の身体に倒れかかってしまったとか、手の甲などが触れてしまった場合、あるいは、荷物を持ち替えたりする際に肘などが隣の人の身体に触れた場合などは、不可抗力または過失になるので、処罰の対象になりません。
でも、相手が故意だと感じて「この人、痴漢です!」と叫ぶようなケースも、ないとは言えません。ラッシュ時間帯の電車やバスの中では、周りの人たちとの身体的接触を避けることが難しいので、十分に注意するほかありません。
“被害者証言”を裁判官が鵜呑みにした
「防衛医大教授痴漢冤罪事件」
2006年4月、東京都世田谷区内を走行中の小田急線車内で、女子高生の下着(パンティ)の中に手を入れ下半身を触ったとして、防衛医科大学校教授のNさん(当時60歳)が強制わいせつ罪で逮捕・起訴されました。
逮捕直後に行われた繊維鑑定の結果では、Nさんの手指から女子高生が着用していた下着の繊維は検出されていません。
被害を訴えた女子高生は、「左手で執拗に触られた」「満員電車で痴漢行為を避けることができなかった」などと証言しましたが、痴漢にあってから途中の停車駅で一度電車を降りたのに、再び同じ車両に乗ってNさんの隣に立っていたなど、不自然な点もあります。
Nさんは一貫して容疑を否認していましたが、東京地裁は、「一度は電車を降りたが、乗客に押されたためNの隣に立った」などとする女子高生の証言だけを根拠に、懲役1年10カ月の実刑判決を下しました。
控訴審から弁護を担当した秋山賢三弁護士らは、原判決の問題点を指摘する再現実験を3通り行い、それをDVD化して東京高裁に提出しました。
当時、痴漢事件で無罪を争うには、再現実験とその映像がないと物足りないと思われるぐらい主流になっていました。
痴漢事件の裁判は、被害を訴えている人の証言と、被告人の証言の、どちらが信用できるかで判断されがちです。







