人気の青菜炒めは支店により味にこだわりがあるようで、「お気に入りは味仙○○店の青菜炒め」とか言う常連客もいるくらいだ。

 僕が必ず頼むのは、豚のコブクロをすごく辛いたれで和えた前菜。ビールに合うからこれは欠かせない。それから酢豚もいい。白菜、玉ねぎ、にんじん、パイナップルなどの定番の具はいっさいナシ。味仙の酢豚は甘酢で豚肉をからめただけのごくシンプルなものなのだ。

 肉オンリーの酢豚には、なぜかきゅうりの甘酢漬けが添えてある。その妙な組み合わせも、他にはない独特さが感じられて、すごく好き。とにかく、何を食べてもおいしい店なのだ。

台湾ラーメンを
「アメリカン」で注文?

 ところで、その店独特の裏用語みたいなものが、飲食店にはたまにある。たとえば、牛丼の「吉野家」でつゆたっぷりにしてほしいときに「つゆだく!」と注文するようなものね。

 味仙の裏用語は「アメリカン」と「イタリアン」だろう。これもまた妙な組み合わせなのだが、看板メニューの台湾ラーメンを食べるときは「アメリカンで!」と言うと辛さ控えめにしてくれる。

 逆に、超辛いのがいいときは「イタリアン!」と言うと、激辛を出してくれる。普通のでも十分に辛いから、味仙の常連になった今となっては、僕が「イタリアン」を注文することは、決してない。

 人に勧められて初めて訪れたときのことは、今でもよく覚えている。僕は、教えられた通りに、食事の締めに台湾ラーメンを頼んで、そのどうしようもない旨辛さに悶絶するハメになった。

 奇しくもランチどきで、店はかなりの混雑ぶり。それだけでもすごい熱気だったのだが、僕は類稀なる汗っかきときている。辛さと熱さで、汗が噴き出て止まらなくなったのだ。

 辛いのは嫌いじゃないが、僕の汗は尋常じゃない。

 修業時代にいちばん大変だったのは、夏場に焼き方を任されたときだ。炭火を前にずっと焼き続けていると、それだけで体重が1日で5キロくらい落ちた。