カレーライスに日本人メロメロ!? 普及に貢献したのは「意外な偉人」だった〈風、薫る第34回〉『風、薫る』第34回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて12年目の著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第34回(2026年5月14日放送)の「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

直美が本領発揮

「正しいこと、正しく言うだけで人は動かない」(直美)

 直美(上坂樹里)は苔癬の患者・丸山(若林時英)の傷への薬塗布を1日3回に増やすことに成功した。

 するとほかの患者もお願いしてきて……。

 直美は藤田(坂口涼太郎)をうまく使って事を進めていく。

 藤田のことを、「(丸山が感激して)出世した暁には銅像を建てたい」とか「患者さん、みんな、藤田先生のような人格者は、いつか医院長になるに違いないと話しているんです」とか大げさに持ち上げる。そのときは声もワントーンあげてかわいさを強調している。

 藤田は真に受けて「何か困ったことがあったらまた」とすっかり直美のペースに乗ってしまっている。

 直美はにっこり、ウソの極上の笑顔を藤田に向ける。

 これってもしや、詐欺師の寛太(藤原季節)との苦い経験を糧にして、直美なりに考えた作戦なのだろうか。

 患者たちは、薬を増やしたいことなど、医者に希望を述べると、わがままと思われて嫌われそうだと遠慮している。その気持ちをくんで直美が藤田に頼むにあたり、正攻法では成功しないと踏んだというわけだ。

 直美以外の6人は、患者に信頼されていないし、医者たちにはあくまで見習いと見下されて相手にしてもらえていない。

 多江(生田絵梨花)が一例として「小理屈女」と陰口をたたかれていると嘆くと、みんなが納得するのはおもしろかった。

 基本、このドラマの登場人物は、言葉は悪いがバカ正直で、思ったことをすぐ口にする。りん(見上愛)がその代表だ。

 唯一、直美がひねくれていて、己の心情を隠している。今回も、その性格は功を奏し、相手に思ってもいないおべんちゃらを言うことで、自分のやりたいことを通すことに成功している。

 正直者たちは真面目なので、「また嘘(うそ)ですか?」と、とがめる。だが直美は動じない。

「大事なのは患者のためでしょ。正しいこと、正しく言うだけじゃ人は動かない。私なりに考えた結果」

 正しいことが嫌いな直美の、ぐうの音も出ない、ど正論。