何を食べても抜群に美味しい
名店の絶品塩むすび

 僕の博多出張を聞きつけて、彼の地に住む出友が「夜、ちょっと飲みにいきましょう」と誘ってくれた。出張するたびに感じ入る現地にいる友のありがたさ。

 この日友人が選んでくれたのは、なかなか予約が取れない人気の居酒屋「お料理 山乃口」だった。

 とり貝の刺身、岩牡蠣、手羽先の唐揚げ、毛蟹、きんきの煮付け、かますの炙り、手巻き寿司、あおさの味噌汁など、評判違わず何を食っても旨い。

 ただ、肴の数々は序章にすぎなかった。友人が僕にいちばん味わってもらいたかったのは、なんと塩むすびだったのである。

 おむすび――握り飯、おにぎりとも言うが、日本人にとってはお弁当やおやつ、ごはんの定番だ。でも、料理人にとってはかなり手強い一品でもある。シンプルだからこそごまかしがきかないのだ。そのため、米の品質、水加減、炊き方、塩の塩梅、握り方、すべてに気を遣う。

 僕がおむすびを握るときは、空気を含ませるように米と米を結びつける様子をイメージしている。だからおむすびという名前がしっくりくると思う。具を入れるなら梅・シャケ・おかか・昆布などの王道がいいだろう。新米で作るなら塩むすびがいちばんだ。

 やわらかく包み込むように握りたいから、形はまあるいのがいい。とまあ、語り出したらキリがなくなるくらい、おむすびは奥深い。

 博多で1、2を争う人気居酒屋で客が揃って締めにほおばるという塩むすびに、僕の期待値はどんどん高まっていった。

シンプルなのに唸るほど旨い
あつあつご飯を操る職人技

 そして、宴会も終盤になったところでいよいよ塩むすびを注文したのだが、その塩むすびのすごいのなんのって……味はもちろんなのだけれど、豪快な作り方に惚れぼれしてしまった。

 なんと、大将が1つ1つ、素手で握るのだ。超あっつあつの、湯気をもうもうと上げて輝く炊き立て飯に、しゃもじをぐわっしぐわっしと突っ込んでは、がばっと掬い上げる。それを素手にのせてゆく。そして、きゅっきゅっと整える。