3月11日の日記に書かれた
「土曜日だけど関係ない」

 震災が起きた当時の日記、1年後の3月11日、2年後、3年後と順に振り返ると、被災地の復興、地元住民との触れ合い、中継中の自分のミスなどが鮮明によみがえります。また、文字の丁寧さ、紙に書きつけるボールペンの筆圧からも、その時の自分が見えてきます。

 特に3月11日の日記は、放送を終えた帰りの新幹線で書くことが多いので、ああすればよかった、こう伝えればよかったという反省とともに、年に数回しか被災地に行けない自分が、被災地の現状を伝えていいのかという葛藤も記されています。今年の現地中継はどんな気持ちでやるべきだろうかと姿勢を整えるうえで、仕事日記はなくてはならない存在なのです。

 また、なぜ現地から中継を行うのか、このメッセージは誰に伝えたいのか、本当に被災者に寄り添っているのか、を毎年考えています。2017年の3月11日は土曜日でしたが、その日の日記にはこう書いてあります。

『「土曜日だけど関係ない」そう言った自分がいて当然。現地から中継する。』

 この文章だけではかなり言葉足らずですが、日記なのでお許しください。これは、放送中にポロッと「今日は土曜日ですが、被災からの復興に平日も土曜も関係ありません」とコメントしたことを日記に書き記したものです。

 これは事前取材を通して生まれた言葉です。あの時、時間が止まったままの被災者や、家業を復活させようと努力し続けている方々が頭に浮かんでいました。こういったことが日記の1行からはっきりと思い出されるのです。

日記があることで
背筋を伸ばして仕事に挑める

『伝える準備』書影伝える準備』(藤井貴彦・ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 また、とても大切な仕事がある時にも「過去の同じ日」の日記を振り返ります。特に選挙特番など、数年に1度しか担当しない番組では、緊張感と高揚感、終わった後のビール缶の冷たさなど、日記を振り返れば思い出すことができます。

 その一方、忘れていた注意点や、交わした会話の内容などが記されている場合は、しっかりとその点を押さえて「本番」に臨むことができるのです。

 例えば選挙特番の場合では、候補者の奥様の名前を読み間違えて番組中に訂正したことを毎回思い出します。災害現場の取材であれば、

『被災地ではなくふるさとであり、がれきではなく誰かの思い出である。』

 こんなことを、日記を読み直して思い返します。こうして自分で自分の背筋を伸ばして、仕事に向き合うのです。

 私はおとといの夕ご飯も忘れてしまっていることがあるので、毎日の日記は未来の自分への贈り物だと思って続けています。