バリバリに働いていた人が鬱になり、どのように社会復帰するかについて書かれた『弱さ考』という本があります。メディア編集長の佐藤友美(さとゆみ)さんは、この本を勧めたある友人から、ある日、想像もしていなかった告白を聞くことになりました。(文/佐藤友美 編集・写真/ダイヤモンド社・今野良介)
ある日、決壊した
先日、久しぶりに友人と飲んだ。
乾杯をして近況を聞いたら、「実は、メンタルをやられていて、しばらく外にでていなかったんです」と言う。
めちゃくちゃびっくりした。
そういえば、1ヶ月に1回くらいは会っていたのに、今年に入ってからは一度も会っていなかったかも、と思い出す。まさかそんな事態になっていたとは気づきもしなかった。
彼は自分で事業を興している。SNSでの発信に多くのフォロワーがいる「しごデキ」ビジネスパーソンだ。
仕事大好き人間で、いつも精力的に新しい話題をインプットしているから、彼とのおしゃべりは楽しい。
その彼が、昨年、事業を拡大しようと考えて、新しいジャンルの仕事にトライしたそうだ。しかし、自分のキャパ以上に仕事を受け過ぎて、パンクしてしまったのだという。
ああ。仕事がデキる人、あるあるだと思う。
あれも、これもと頼まれてしまい、業務内容が拡大してしまう。
自分も期待に応えたいから、つい、頑張ってしまう。
そして、能力が高いから、無理やりにでもこなしてしまう。
また、喜ばれる。仕事が増える。頑張るの無限ループ。
彼もそうだったらしい。
ところが、その循環がある日、決壊したのだという。
「突然、仕事中にぶわーっと涙が出てきちゃって。あれ? これはヤバイかもと思ったんです」
そこで、クライアントと交渉し、仕事を当初の約束の範囲まで戻してもらったそうだ。
仕事で引きこもってばかりだったので、なるべく、外に出るように心掛け、なんとか復調してきたと話してくれた。
「これはヤバイって、よく自分で気づけたね」
と、私が聞くと
「『弱さ考』のおかげなんです」
と言う。
『弱さ考』というのは、NewsPicksパブリッシングの編集長だった井上慎平さんが、鬱になって気づいたことを書いた本だ。その本に描かれていた、「井上さんが鬱になっていく様子」が、自分とそっくりだったのだという。
実は、彼には10年前に適応障害になって会社を辞めた過去がある。だから、次にメンタルを崩しそうになったときは、ちゃんと気づけるはずだと思っていた。
でも、実際は、「『弱さ考』を読んでいなかったら、過去の経験を生かせず、また頑張り続けてしまっていたかもしれない」と言う。井上さんの本を読んでいたからこそ、踏みとどまることができたのだと。
そして、「この本、紹介してくれたのがさとゆみさんだったので、お礼しようと思って」と、言ってくれた。
あああああああ、本当に良かった。
大事な大事な友人の危機を、未然に救ってくれる本があってよかった。
「自分がメンタルを崩すことは、もうないと思っていたので」
と、彼は言っていた。
いや、本当に。私もびっくりした。
だけどきっと、「まさか自分が」とか「まさか彼が」という人がたくさんいるんだろう。
どうにもならないところまで頑張ってしまう前に、「あれ、これは変かも」に気づけるこの本は、お守りみたいな本だなと思う。
(※本記事は、書籍『強いビジネスパーソンを目指して鬱になった僕の 弱さ考』についての書き下ろし記事です)
書籍ライターとして、ビジネス書、実用書、教育書等のライティングを担当する一方、独自の切り口で、様々な媒体にエッセイやコラムを執筆している。さとゆみビジネスライティングゼミ主宰。卒ゼミ生によるメディア『CORECOLOR』編集長。著書に『書く仕事がしたい』(CEメディアハウス)、子育てエッセイ『ママはキミと一緒にオトナになる』(小学館)、『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)など。1976年北海道知床半島生まれ。




