理不尽な相手に、わざわざ好かれようとしていないだろうか。人間関係のストレスの多くは、「いい人でいよう」とするほど増幅していく。『人生は「気分」が10割』の著者、キム・ダスル氏の新刊『人生は期待ゼロがうまくいく』の発売を記念した本稿では、ライターの柴田賢三氏に「ストレスを溜めないコツ」についてのエッセイをご寄稿いただいた。(企画:ダイヤモンド社書籍編集局)
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イラっとしたら“即反撃”
私が若い頃に勤めていた会社に、山田さん(仮名)という少し年上の先輩がいた。
彼は真面目そのもので、年下の私にも「さん付け」するなど、最初の印象は「人当たりの良い人」だった。しかし一緒に働いていると、根は粘着質で嫌なヤツだということがわかってきた。
仕事も、そこそこ。ずば抜けて優秀というわけでもなかった。
そんな彼には同期が4人いた。もちろん山田さんは出世欲も強く、“昇進適齢期”になるとソワソワし始めて、直属の上司に気に入られようと明らかなお世辞を言いまくるなど、他の同期や後輩にも煙たがられていた。
春の人事が発表され、山田さんたちは無事「主任」に昇格したが、同期で一人だけポジションアップできなかった先輩もいた。藤平さん(仮名)という人で、彼は同期の中で一番仕事ができると評判だったが、上司に媚びることができないタイプだった。
しかも屈辱的なことに、藤平さんは山田さんの直属の部下になったのだ。
優秀な藤平さんを出し抜いて上司になった山田さんは、最初のチームミーティングでさっそくカマシを入れた。
「えー、これからは皆さんを呼び捨てにします。上下関係をはっきりさせないと仕事にならないので」
一瞬で場が凍りついたが、藤平さんは即座にこう返した。
「了解。で、山ちゃん、今やってる案件なんだけどさ…」
われわれ後輩は、笑いをこらえるのに必死だった。
「あなたが嫌い」は
自分を守る言葉
“人生の指標”となる言葉の数々を収録している本、『人生は期待ゼロがうまくいく』の中には「即座に『カウンターパンチ』をお見舞いする方法」という項目がある。
著者のキム・ダスル氏は、「気分は、行動に影響する。だからピンチに陥ったときこそ、現実を変えるためのひと言が大事」だとして、ストレートな一言を紹介している。
2.「私もあなたのことが嫌いですよ」
自分を毛嫌いする相手に無理して好かれようとする必要はない。いい人でいようとするほど、心はすり減る。そんなときは、同じテンションで嫌ってやればいい。
「私もあなたのことが嫌いですよ」と心の中でつぶやくだけで、気持ちはずいぶん楽になる。
相手のことを、誰もが避ける「クソ」だとみなすのだ。この言葉の盾があれば、嫌いな相手から何を言われようと屁でもない。
――『人生は期待ゼロがうまくいく』(p.147)
キム氏は、心の中でつぶやくだけでいいと書いているが、藤平さんは声に出して即座に「カウンターパンチ」を放ち、山田さんを黙らせた。
それから数十年が経った現在、藤平さんは実力で立場を逆転し、どんどん出世。万年「係長どまり」になった山田さんが直接話しかけることができないほどの差をつけているそうだ。
(本記事は『人生は期待ゼロがうまくいく』の発売を記念した書下ろしエッセイです)
大学卒業後、複数の出版社や不動産会社での社員を経てフリーライターとして独立。週刊誌、月刊誌、WEBメディアなどで記者、編集者を経験した。事件、芸能、スポーツ、サブカルチャーまで幅広く取材に携わり、のちに新聞やテレビでも大きな話題になったスクープをモノにしたこともある。





