立ち上げに当たって決めていたのは、当面は卸売を行わず、小売に全力を注ぐということだった。その足掛かりとして、まずはクラウドファンディングに挑戦することにした。
流行に乗ったわけではない。小売販売を軸にする以上、地域の人々からの「応援」を可視化することが不可欠だと痛感したからだ。
事業承継が公表された直後、ミカエル堂の復活を喜ぶ声は数多く上がった。しかし当時の同店は、SNSアカウントも公式ホームページも持っていなかったため、その熱量を受け止める場がなかった。
想いを共有しつつ、応援してもらえる場はどこか――それが、クラウドファンディングに思い至った最大の理由だった。
「宮崎名物ジャリパンプロジェクト」と銘打ち、クラウドファンディングプラットフォーム・CAMPFIREで目標金額100万円を掲げた。結果は、目標額を大きく上回る158万円で着地した。しかし、得られたのは資金だけではなかった。
「ミカエル堂が復活する」こと自体が話題になり、オープン前から県内メディアからの取材が殺到。開店初日の11月14日には、わずか9坪の店に150人もの行列ができた。その熱気は県外にまで広がり、オープン後1カ月半もの間、整理券なしには営業が成り立たないほどの大盛況となったのだった。
写真提供:ミカエル堂
「客を取られてしまうのでは」
反発の声にはコミュニケーションで寄り添う
話題の店であっても、オープン時の一時的な盛り上がりで終わってしまうケースは少なくない。大津氏はそれを見越して、新生ミカエル堂でも卸売展開ができないかと開業前から検討を重ねていた。
しかし、かつてのスタイルのように、スーパーマーケットへ納品する場合、早朝からパンを仕込む体制は、人材確保の観点から選択肢から外した。選んだのは、準備期間中に研究を進めていた瞬間冷凍技術を用いた納品スタイルだ。
店舗運営が軌道に乗ったタイミングで、ゆくゆくは卸販売で売り上げの底上げを図る――そんな算段だ。ただ、旧ミカエル堂はスーパーマーケットで販売していたが、その販路を引き継いではおらず、店舗の開拓が必要だとも考えていた。







