そこに、うれしい誤算があった。開業したことを知った地元の小売店側から「ジャリパンの販売を再開してほしい」と連絡が入り始めたのだ。歴史ある企業の事業承継という強みがここで発揮された格好だ。結果として、オープンから4カ月後には、小売店での卸売販売を開始することになった。

 順風満帆に見える再始動だが、当初は応援の声ばかりではなかった。

 どうしたら地元になじみ、応援してもらえる存在になれるのか。これは大津氏が事業承継後に、もっとも腐心した課題だった。クラウドファンディングもその手段の一つだが、例えば地元の商工会に入会し、地域の集まりには可能な限り顔を出すといった地道な努力を積み重ねた。

 ミカエル堂が店を構えた商店街では、オープン前に、一部の事業者から「客を取られてしまうのではないか」と反発の声もあった。

 しかし、大津氏はそうした声を上げた相手のもとへこそ、積極的に足を運んだ。そして、決して相手を説得しようとはせず、ただ世間話に徹したのだった。大切なのは言葉による証明ではなく、コミュニケーションそのものだと信じていたからだ。

 今ではミカエル堂が呼び水となり、商店街全体の回遊性が高まっただけでなく、従業員同士の交流も活発になり、当初の懸念はいつしか霧消していった。

セブンが知らしめた「市場規模」
次の100年は全国展開も目指す

 想定していなかった“知名度拡大”もあった。

 セブン-イレブンは2022年ごろから、地域限定の味を全国展開する試みを始めており、その一環で「ジャリパン」を宮崎名物としてラインナップに加えた。販売開始当時はまだ事業譲渡前であり、ミカエル堂側への直接の連絡はなかったという。その後も、同社は断続的にフェアや新商品としてジャリパンを展開し続けている。

 大津氏はこの状況を、「ジャリパンという商品が受け入れられるマーケットの規模を、コンビニ最大手が証明してくれた」と、きわめてポジティブに捉えている。