2006年に設立されたクランチロールは、当初はファンサブ(ファンによる非公式字幕)をつけた映像コンテンツをユーザーがアップロードし共有する場として始まった。つまり、スタート地点は無許諾のコンテンツを中心にした「海賊版サイト」に近いアンダーグラウンドな場所だったのだ。

アニメファンが集うサイトから
コミュニティが生まれる場に

 しかし、その後に投資を受けたクランチロールは正規化へと舵を切る。2009年には公式に権利者からライセンスを取得したコンテンツのみを配信する方針への転換を発表。そこからは日本のテレビ局と提携し『NARUTO-ナルト-』などの人気作品の正規配信を行ってきた。

 クランチロールは日本では配信を行っていないので、国内での知名度はそこまで高くないかもしれない。だが、ニッチなサブカルチャーの愛好家だった世界各地のアニメファンをつなぎ、グローバルなネットワークを構築してきたその功績はとても大きい。

 そして、2010年代を通じてすでに確固たる地位を築いていたクランチロールの影響力は、ソニーによる買収後に飛躍的に伸びた。2017年にソニーが買収していた米アニメ配給大手「Funimation(ファニメーション)」との統合により、映像配信だけでなく、アニメ映画の配給やイベント、グッズ販売などビジネス領域も拡大した。

 2020年7月に約300万人だったクランチロールの有料会員数は2021年8月に500万、2022年9月に1000万と急増している。さらに大きかったのは、その数字が単なる「視聴者数」ではなく「ファンコミュニティの大きさ」として拡大していったことだ。無料プランも含むサービス登録者は2021年8月で1億2000万人を突破した。

YOASOBIブレイクの予兆を
嗅ぎとった裏方の動きは早かった

 YOASOBIもこうしたアニメ人気の広がりに乗って海外に人気を築いた、と思う人も多いだろう。しかし実態は異なる。実はもっと早かった。

 時計の針を2021年に戻そう。この年すでに、YOASOBIは「海外で最も再生された日本のアーティスト」の1位となっている。