音楽配信プラットフォームの進化により、日本の音楽は言語の壁を越えて世界へと広がりつつある。その象徴的存在であるYOASOBI「アイドル」の大ヒットには、制作・流通・価値配分という3つの民主化が背景にあった。ニコニコ動画から発展したボーカロイド文化など、日本独自の音楽カルチャーが世界展開の土台を形成してきた過程を、音楽×テクノロジーの第一人者が解説する。(聞き手/ジャーナリスト・研究者 まつもとあつし)
音楽を巡る
2つの常識が崩れた
音楽を巡る2つの「常識」が崩れた。1つは「言葉の壁もあり、日本の音楽は世界でヒットすることはない」という常識、もう1つは「いくら日本のアニメが人気があるとはいっても、世界で一般化することはなく、付随する音楽も大ヒットはあり得ない」というものだ。
しかしここ数年、最新曲のみならず80年代の名曲も世界でヒットする現象が続いている。特に2023年にYOASOBIの「アイドル」が米国ビルボード・グローバル・チャートで首位を獲得したことは世間を驚かせた。こうした動きの背景に何があるのか? ユニバーサルミュージック出身で、現在はJASRAC理事を務めながら、エンターテック(次世代エンターテインメント×テクノロジー)の最前線で活躍する鈴木貴歩氏に聞いた。鈴木氏は、先日発表されて注目を集めた音楽産業に関する経産省のレポート「音楽産業の新たな時代に即したビジネスモデルの在り方に関する報告書」を編集した研究会の構成員の一人でもある。