
もしも、多江が朝ドラヒロインだったら
これが欲しかったとばかりに、多江はバーンズの差し出した水を飲み干した。喉が痛いから潤したかったわけだ。野菜ゴロゴロスープはそのあとだ。シーツもしわになっていて、背中に当たって違和感があった。換気はいいが、やり方が悪かった。
「看護婦とは何か」の課題を何ひとつ実践できなかった6人。これまでの授業が何ひとつ生かされてなかったのだ。
それにしても、だ。6人そろって不勉強という展開はいかがなものか。ひとりくらいできる子がいてもいいのではと思うが、誰かひとり目立つのは避けたいという気遣いだろうか。できる子は多江で、父の患者の診断も適切にしていた。でも、父はまったく相手にしてくれない。
多江の物語は、朝ドラの題材にもなり得そうだ。
もしも、多江が朝ドラヒロインだったら。
明治時代、まだ女性が職業に就くことも、まして医者になることも難しかった時代、女医を目指し、挫折して看護婦となるも、実家を街ではじめて看護婦のいる病院にした主人公の物語――朝ドラ『タエちゃん』。紆余曲折を経ながら、最終的には女医になる。モデルは、明治時代、日本初の女医となった荻野吟子でどうだろう。
成績優秀ながら前例がないと医者になることを認められず、それでも諦めず、34歳で産婦人科医を開業、日本初の女医となったという人物だ。断っておくが、多江のモデルがこの人というわけではなく、医師の前に看護婦だった経歴もない。あくまで朝ドラで、日本初の女医を描くとしたら、という妄想である。
荻野吟子は、今年(26年)2月、埼玉県熊谷市がNHK連続テレビ小説(朝ドラ)の誘致に乗り出したという記事が朝日新聞に掲載されていた。実現の可能性があるかもしれない。
家族が医者で、医者になる物語はすでにある。『梅ちゃん先生』(2012年度前期)で、山本耕史と結婚して潔く引退した堀北真希が主人公の梅子をピュアに演じた。彼女はあえて「劣等生」の設定で、そんな劣等生が戦後の混乱期に医者になるために奮闘する。
戦後、やがてなくなる女子医学専門学校で梅子は懸命に学ぶ。性別関係なく医大で学べるようにシステムが変化して、女子医学専門学校がなくなるのだ。この時期をドラマの舞台に選んだ理由は、女子医学専門学校がなくなる時期、劣等生の梅子の留年できないハラハラ感を演出するためである(大意)と脚本家の尾崎将也が、『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 梅ちゃん先生』で語っている。







