そのためにまず求められるのは、日本自身による抑止力の強化である。

 狭隘な国土という制約を抱える一方、仮想敵のすべてから海で隔てられているという地政学的優位を我が国は持つ。この点をフル活用するために海上・航空拒否力の大幅な強化を図らねばならない。

 ただ、凄まじいペースで海・空軍力の質的・量的増強を進める中国に対して正面から対抗することは困難であり、無人システムやICT(編集部注/情報や通信に関する技術の総称)を用いた非対称型の抑止力を思い切って進めることが我が国としての方向性となろう。

 これに際しては、実際に無人システムを用いて黒海西部の海上優勢を確保したウクライナの経験にも大いに学ぶべきである。

自らを守ろうとしない者を
アメリカの核は守らない

 それでも、我が国が単独で信憑性のある抑止力を維持・構築することは難しい。

 中国・ロシア・北朝鮮がいずれも核保有国である事実(しかも中国とロシアがそれぞれ世界第3位と第2位の核戦力を保有するという事実)を踏まえるなら、米国の拡大核抑止力は今後とも我が国の安全保障の中核を成す要素であり続けざるを得ないだろう。

 ただ、国際秩序の維持から米国が徐々に後退していこうとする中では、以上を自明の前提と見做すことはもはやできない。

 通常戦力レベルでの抑止力については自国でできることはやり、どうしてもカバーしきれない部分(核抑止力)だけは米国に依存するという姿勢を我が国が示すのでなければ、拡大核抑止力を繋ぎ止めることは困難である。

 このことはまた、大国間戦争の抑止(戦略レベルの安定性)を維持しつつ、大国による非・大国への侵略抑止(地域レベルの安定性)にも貢献しよう。

 したがって、非核長距離打撃力(例えば中国の航空作戦を阻害する飛行場攻撃能力)などについても、可能な限り自前で保有することが我が国には求められる。

 その発射プラットフォームの整備や、逆に仮想敵の長距離打撃能力に対する抗堪性の強化も併せて進める必要がある。