野村選手はもともと飛距離を出せる力を持っており、一方で「ミート率の向上が課題だ」という自覚もありました。そこで、特徴を活かすためにも、まずは確実性を高めることに軸を置くことにしました。そのうえで、「どこに注意を向ければ確実性が上がるのか」を、練習の中で検証していくことにしたのです。

 打席の中で注意を向けられそうな対象を挙げていくと、候補は10個ほど出てきました。打撃練習の中で、それらを1つずつ試しながら、どこに注意を置いたときに確実性が高まるのかを確認していったところ、明らかに再現性の高いポイントを2つまで絞ることができました。

 それ以降は、打席の中で注意が逸れたとしても、その2つのポイントに淡々と戻し続ける、そのスタンスを徹底していきました。うまくいったかどうかを確認するのではなく、逸れたら戻す。それを繰り返していったのです。

 結果として、打率2割7分1厘、チーム2位の12本塁打、102安打といずれもキャリアハイとなる成績を収めてくれました。

いちいち打率に囚われていると
打席で注意が散漫になってしまう

 多くの場面で、私たちは無意識のうちに、「できたか、できなかったか」「うまくいったか、いかなかったか」という二元論で自分の状態を捉えてしまいます。

 打てた試合は良くて、打てなかった試合はダメ。集中できた日は前に進み、できなかった日は前進していないように思ってしまう――。しかし、そうした捉え方はわかりやすい一方で、本番になればなるほど注意を結果や評価へと引き寄せ、集中を不安定にしていきます。

 結果や出来を基準にしてしまうと、プレーや行動は常に評価の対象になります。1つうまくいかない出来事が起きただけで、それまで積み重ねてきた感覚や手応えまで、まるごと否定されたように感じてしまうのです。

 すると注意は、今取り組んでいる行動そのものから離れ、「取り返さなければ」「挽回しなければ」という発想へと向かっていきます。その時点で、注意は一点にとどまれなくなり、集中はあちこちに飛び回り始めます。