この捉え方から距離を取る1つのヒントが、目標や戻り先を「結果」ではなく「積み重ねられる対象」に置くことです。

 ホークスの周東佑京選手は、目標設定の1つを打率ではなく安打数に置いています。打率はどうしても「上がった」「下がった」と数字に一喜一憂しやすく、感情が揺れ動きやすい指標です。一方で安打数は、1本1本を積み重ねていくものです。打てなかった打席があったとしても、次の打席でまた1本を狙いにいく。その思考に自然と切り替えやすいのです。

 周東選手はその構造を理解したうえで、意図的に安打数という目標をシーズンの初めにセットし、シーズン中も常に意識し続けていました。

 ここで重要なのは、安打数が増えているかどうかを逐一確認することでも、「打てたか、打てなかったか」を評価することでもありません。ただ、安打数という積み上げ型の目標を置くことで、注意は評価ではなく「次の1本」に向きやすくなります。

 結果が出なかった打席があっても、その出来が次の打席の意味を奪うことはありません。やることは変わらず、同じ姿勢で次に向かうだけです。

極限の試合であっても
中村晃は過程を重視していた

 このような考え方は、シーズン終盤の緊張感の高い局面でも同じです。首位を守らなければならないリーグ戦終盤の2025年9月。チーム全体が結果や他チームの動向に意識を引っ張られ、守りに入りかけたとき、中村晃選手に、優勝争いを戦い抜くうえで大事な考え方を聞いたことがありました。すると、こう返ってきました。

「こういうときは、結果や他チームの動向に意識を向けてはいけない。自分たちが、毎日ヘトヘトになるまで出し切ること、それだけです」

 自分が持っているものを、その日、その場でどれだけ出そうとしたか。「出せたか、出せなかったか」ではなく、出し切ろうとする姿勢を貫くことが大切だと、中村選手は考えていたのです。

 この言葉は精神論のように聞こえるかもしれませんが、構造としては先ほどの周東選手の事例と同じです。注意を結果に置かず、その場でどんな姿勢でプレーするかに置いている。だからこそ、状況がどれだけ緊迫しても、注意の戻り先は揺れません。

 やるべきことは変わらず、今この一球、この一打にすべてを出し切ることだけを考えればいいのですから。