
FAで有力選手を獲得するたび金満球団の“強奪”と揶揄されがちなソフトバンクだが、その裏ではNPB唯一の4軍制を敷き、育成にも惜しみなく投資をしている。いまや4軍ですら大谷翔平が使う最新マシンを駆使し、科学的なトレーニングが行われているのだ。長谷川勇也や斉藤和巳などのホークスのレジェンドたちが手がける、前代未聞の育成計画とは?※本稿は、喜瀬雅則『ソフトバンクホークス4軍制プロジェクトの正体 新世代の育成法と組織づくり』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。
監督やコーチの主観を頼りに
選手を評価してきた野球界
これまでの野球界では、監督やコーチの「主観」がどうしてもモノを言った。
あいつ、よう頑張っとるから、1軍に上げてやろう。バッティング、力強くなってきているから、1回上でやってみてもええやろ。
ソフトバンクの場合、2025年は支配下65人、育成54人の総勢119人で2月のキャンプインを迎えた。この119人にそれぞれ、チーム内で「本籍」と呼ばれる、1~4軍の振り分けが行われている。
試合でのパフォーマンスやトレーニングのデータの改善ぶりをチェックした上で常に昇格、降格が行われているが、こうした評価にも、コーチの主観ではなく、データという客観的指標が必要になる。
そうでなければ、やれ、軍が上がれば「ひいき」だと言われ、落ちたら「干された」と、その理由を野球以外のところに結び付けられてしまうのだ。それがある意味、人間社会かもしれない。
しかし、そうした人の主観に左右される、曖昧な部分をできるだけ取り除いていくために「データサイエンス」があるともいえるのだ。