「言語化だけがすべてではない」「絵を描くように考えるのが大事」「口下手のままでも伝え方は上手になれる」など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「誰とでも同じテンションで話すのはなぜ難しいの?」→人気イラストレーターの答えがめちゃくちゃ納得すぎた

同じテンションで話すのは難しい

「誰に対しても同じ態度で接しましょう」

 社会に出ると、よくそう言われます。
 ですが実際には、誰とでも同じテンションで話せる人なんて、ほとんどいません

 職場では静かな人が、友人との飲み会では急に明るくなる。
 逆に、外では愛想がいいのに、家では無口になる。

 そういう変化は、多くの人に心当たりがあるはずです。

言語化だけじゃ伝わんない』という本では、その理由を非常に面白い視点で説明しています。

人は相手によって「自然に」変わっている

 本書では、まずこんな話が出てきます。

後輩には偉そうな態度の先輩が、彼女にはヘコヘコしているのを見たことがあります。
「変わりすぎだろ!」とツッコミたくなりますが、これは自然な態度とも言えるのです。
他人がやっているとびっくりするのですが、実際にみなさんも、相手によって話す内容や話し方を変えているはずです
会社ではおとなしく、退勤時間を待ちわびて黙々と仕事する人でも、趣味が一緒の友だちとの飲み会では大声で場を仕切っていたり、親には当たりが強くなったりします。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 たしかに、人は相手によって別人のように変わります。

 ですが、それは「性格が悪い」というより、「距離感に応じて自然に振る舞いが変化している」と考えたほうがしっくりきます。

人は心の中で「頭身」を変えている

 本書の面白いところは、この変化を「漫画の頭身」で説明している点です。

漫画家はこのような態度のちがいを「頭身」であらわすことがあります。
鳥山明の漫画『Dr.スランプ』では、場面に応じて頭身を変えるキャラクターの則巻千兵衛博士が出てきます。
千兵衛博士は、ふだんは三頭身です。
しかし、好きな女性が現れると急に五頭身に切り替わり、カッコつけはじめます。
ただ、五頭身はとても疲れます
だから長時間キープすることができず、気を抜くとすぐに三頭身に戻ってしまいます。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは絶妙なたとえです。
 つまり、人は相手によって「見せる自分」を変えているのです。

 しかも、その切り替えにはエネルギーが必要です。
 だから、「誰とでも同じテンションで接しろ」と言われても、それはかなり無理があります

ビジネスでは「自然さ」が許されにくい

 さらに本書では、仕事になると事情が変わると語られています。

実際のコミュニケーションでも、距離感は目に見えない形であらわれています。
みんな、心の中では「頭身」を自在に変えているものです。
そして、距離感に応じてみんな態度を変えているはずなのです。
ところが、仕事になると状況が変わってきます。
「誰とでも分けへだてなく話すのがふつう」という考え方が常識になっていく。
就職活動では、初対面同士でグループディスカッションを行なうことがあります。
ビジネスでは、「話しやすい人とだけ話す」という甘えた態度は許されないのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 ここに、多くの人が感じている「しんどさ」の正体があります。
 本来、人は距離感に応じて自然に態度を変える生き物です

 しかし、仕事では「誰とでも均一にコミュニケーションできること」が求められる。
 だから疲れるのです

無理に「完璧なコミュ強」を目指さなくていい

 最近は、「コミュ力が高い人」が理想像として語られがちです。
 ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』では、「人によって態度が変わるのは自然なことだ」と教えてくれます。

 無理に四六時中「五頭身」でいようとすると、当然疲れます。
 大事なのは、「誰とでも同じテンションで話せること」ではありません。
 相手との距離感を理解しながら、自分なりに自然なコミュニケーションを探していくことなのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。