「古民家の解体をゼロにしよう」
明治29(1896)年に行われた上棟式の日付の墨書きが残る「土蔵の棟木」(山翠舎蔵)。130年の時間を超えて施主や職人の思いが現在によみがえる 写真提供:山翠舎拡大画像表示
――古木を内蔵している空き家は、もはや地域の懸念事項ではなく、価値ある資産になり得るということですね。
山上 私は空き家を見ると「もったいない」という思いに駆られます。それは、過去を惜しむ感傷ではなく、使える材を無駄にしないという「資源の視点」と、時間を軽視しないという「倫理の視点」からです。
これまで古木は「過去の遺産」として扱われてきました。しかし、処分を待つ廃棄物でも、単なる再利用可能な材料でもなく、時間が価値に変わる瞬間を可視化する素材であり、「未来の資源」なのです。
私たちの宣言「古民家の解体をゼロにしよう」には、古民家を単に壊して廃棄するのではなく、新しい付加価値を付けて今の社会に送り返すという思いが込められています。
古木を扱う事業は、日本に眠る資産の再発見であり、時間価値を経済化するビジネスモデルであり、日本の文化を持続可能な形で次世代へ手渡す取り組みだと考えています。
古木を木材として取り出すだけでなく、そこに刻まれた時間の記憶を引き受ける覚悟をもって新たな用途を開拓し、次の時代の使い手に受け渡すための「時間の価値を再編集する責任」を担っていきたいのです。
そして将来的には、古木や古民家が「解体される負動産」ではなく、「時間価値を生み出す文化資産」として流通する社会インフラを、日本から世界へ実装していきたいと考えています。
■山上浩明(やまかみ・ひろあき) 株式会社山翠舎 代表取締役社長

1977年、長野県生まれ。2000年、東京理科大学理工学部卒業、ソフトバンク株式会社入社。05年、株式会社山翠舎入社。12年より現職。21年、事業構想大学院大学修了(事業構想修士)
■株式会社山翠舎 本社・長野県長野市、支社・東京都渋谷区
1930年、長野県長野市で現社長・山上浩明氏の祖父・松治郎氏が建具屋「山上木工所」を創業。70年、浩明氏の父・建夫氏が事業を継承し住宅など一般建築の施工に事業を拡大、法人化。社名を「株式会社山翠舎」に変更。2006年、古木買い取り事業を開始。
【特許】木柱のジャッキアップによる家屋修繕方法(2022年)、古木のトレーサビリティーシステムに関する情報処理装置(2024年)
【登録商標】「古木(こぼく)」「KOBOKU」(2018年)、「Re古民家」「恵美寿柱」(2020年)、「古民家ジャッキアップ再生」「SANSUI」(2023年)、「古築」(2025年出願)ほか
【第三者機関認証】FSC CoC認証(森林管理協議会、2019年)、エコマーク(日本環境協会)ほか
photo by K.H







