全国の旧宿場町に古民家再生「分散型」高級宿をつくる

古民家を解く。「古民家を解く。」ことで生まれるサーキュラーエコノミー(循環型経済)のイメージ 画像提供:山翠舎
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――古木の価値が広く浸透する途上の現段階で、さらなる認知拡大にどのような施策を打ち出していますか。

山上 古木の活用とともに、継手ソリューションにより古民家を再生する「古民家を解く。」というミッションを掲げ、これから20年で1万戸の古民家を解く(=壊すのではなく解体し再生する)ことを目標にしています。

 具体的には三つの方向で施策を立て、「古民家ルネサンス構想」として推進しています。

 第一に、古民家再生を起点にした新たな事業モデルの構築。

 第二は、新築物件に古木を移築して未来の空間へと再構成する「古築(こちく)」。

 第三は、冒頭で述べたラグジュアリーやアートの領域を中心とした古民家・古木の海外展開です。

――第一の「古民家再生を起点にした新たな事業モデル」とは。

山上 第一は、まさに継手ソリューションを駆使し、全国で古民家を再生する「48宿構想」です。昔の街道沿いにある宿場町には古民家が多く残っているので、全都道府県1カ所プラス1、計48カ所の歴史ある地域で古民家を宿泊施設や気軽に立ち寄れる現地拠点として生まれ変わらせる計画です。

 その先駆けとして、「旅の目的地となる宿」を全国で展開する企業・温故知新と連携し、長野県小諸市にて古民家分散型ホテルのプロジェクトをスタートさせています。

 古民家は、北国街道(※3)沿いに点在する空き家となっていた建物で、かつての家具店、歯科医院、たばこ店、材木店、銭湯など10戸。各戸の歴史とストーリーを読み解き、往時の姿が感じられるような空間とします。さらに、古木を用いて設計するレセプション棟をプラスしたスモールラグジュアリーホテルです。

 再生古民家に滞在することで時間資本の価値を体感してもらえて、ひいては、地域文化の保存に寄与でき、街全体を「ゆったりと流れる時間を体験できる場」として価値を高めていける。そのような新しい事業モデルの構築を進めています。

――今ある古民家を生かし、その地域の観光資源として活用していくのが一つ目の施策。では、二つ目の「古築」とはどのようなものですか。

山上 古築」は当社がつくった名称で商標出願中なのですが、新築する物件に内装材の一部として古木を使う手法です。単にデザイン性を追求することが目的ではありません。

 新しい建物・空間であっても100年、200年という古民家のストーリーをインサートでき、完成直後から、時間を経ないと感じられない落ち着きや重厚さをもたらすことが可能になります。

 つまり、建物が新しく生まれた瞬間から、「時間を内包する」装置を備えているのが「古築」というわけです。

 古築には、当社のストックから最適な古木を選んで内装材に使うのみでなく、解体した古民家を別の場所で再構成する移築に近い手法も含まれます。

 その一例が、2020年に東京・日本橋にオープンしたニューバランスのコンセプトストア「T-HOUSE New Balance」。クラフトマンシップを現代的に表現する空間を創造するため、当社は古民家移築に関する専門家としてプロジェクトに参画しました。

 元になった建物は埼玉県川越市に立っていた築122年の蔵で、解体した古木をなるべく生かしながら新築の鉄骨建物内に再び構築。エントランスの扉や梁組みなどは、蔵で使われていたものを再利用し、蔵の佇(たたず)まいと新しい機能を両立させています。

 前に紹介した「パタゴニア軽井沢ストア」や「R Baker うめきたグリーンプレイス店」「voco大阪セントラル」(「」参照)も古築の代表例で、すでに600件以上の実績があります。海外で進んでいるレストランのプロジェクトも古築に入ります。

  「48宿構想」は、街道沿いに空き家となった古民家があって初めて成立する施策ですが、古築なら場所の制約を受けずに施工が可能です。既存の建物など規格の決まった空間にも採用できるため、都市部での展開を中心にさらに普及させ、市場拡大につなげたいともくろんでいます。

※3 こもろ観光局ホームページ「北国街道・小諸宿」参照