「どうしてストレスがたまったら女の子を触ろうと思うんですか?」人を責め立てる非行少年の意外な過去【マンガ】『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社

児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第12話「卒業」から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。

性非行に走る少年たちの意外な共通点

 前話からの続きとなる本話では、幼女への性加害によって少年院に収容された出水亮一(仮名)が、院内で継続して受けている性加害防止プログラムの様子が描かれています。

 今回は、その中でも「妊婦体験」と、自身がなぜ性非行に及んだのかを少年たちの前で発表するワークが中心となります。

 妊婦体験は、妊娠の大変さを疑似的に体験するだけでなく、生命の尊さや、性が本来は生命誕生のために必要で神聖なものであること、そして性非行がそれらを踏みにじる行為であることを学ばせる目的で行われています。

 少年たちはまず、約8キロの妊婦体験ジャケットを装着し、立ったりしゃがんだりする動作を通して妊婦の身体的負担を体感します。さらに、本物に近い質感の赤ちゃん人形を抱くことで、想像以上の重さや、首がすわっていない不安定さを実感していきます。

 続いて行われるのが、「なぜ性非行を行ったのか」を発表するワークです。自分の行為の理由を理解し、言葉にできなければ、再び性非行を繰り返す可能性が高まります。

 また、性非行の場合、加害者が被害者と直接会って謝罪する機会はほとんどないため、「なぜやったのか」を自分自身で理解していなければ、被害者の気持ちは救われません。だからこそ、この作業には時間をかけて丁寧に取り組む必要があるのです。

 しかし、いわゆる「ケーキの切れない非行少年たち」と呼ばれる、知的能力に課題を抱える少年たちにとって、「なぜやったのか」を考えること自体が大きな壁となります。

 著者自身も少年院でプログラムを担当した経験から、被害者の心情を理解できない、なぜわいせつな行為が悪いのか分からず、自分の行為を省みず他人を責めるなど、反省以前の段階にある少年が多かったことを実感しました。彼らの答えは、多くの場合「触りたかったから」という単純なものでした。

 一方で、そうした少年たちには共通点がありました。

 学校でいじめ被害を受け、強いストレスを抱えていたこと、そして性的な刺激に日常的にさらされ、性的行為によって一時的にストレスが発散された経験を持っていたことです。そのため、彼らへのプログラムは、性の歪みを理解させること以上に、いかにストレスを減らすかに重点を置く必要があるのではないか、という観点も浮かびあがりました。

 亮一は、性非行に及んだ理由や被害者への謝罪の気持ちを、表面的には言葉にできるようになり、ストレス発散の方法としてスポーツを挙げています。しかし、それを聞いた六麦は、どこかで聞いたことのある答えだと感じ、不安を拭えません。

 とりわけ亮一の「もう大丈夫です」という言葉は、六麦の不安をさらに強めるものでした。「大丈夫だ」と語る少年ほど、再び非行に及んで戻ってくる例を、六麦はこれまで数多く見てきたからです。そして次話では、その六麦の不安が現実のものとなります。

 原作者である宮口幸治は、児童精神科医として、実際に医療少年院の勤務歴があります。その経験から書いた『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)をマンガ化した作品。マンガの続きは「ケーキの切れない非行少年たち」でチェック!

『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社